研究課題/領域番号 |
20K00528
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
生駒 夏美 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (60365525)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アンジェラ・カーター / ポストヒューマン / 戦争 / レベッカ・ウェスト / グローバル文学 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究課題の2年目となる2021年度もコロナ禍のために残念ながら海外でのアーカイブ調査を行うことが叶わなかった。しかし研究は国内で着実に進めることができた。 研究成果論文“Carter and the Japanese Signs: Bunraku, Mishima, Irezumi and Sozo Araki”が Angela Carter’s Pyrotechnics: A Union of Contrariesとして Charlotte CroftsとMarie Mulvey-Robertsの共編著としてBloomsburyから7月に刊行された。 また、新たに国内で3つの出版企画(アンジェラ・カーターの単著企画1件、マーガレット・アトウッドの論集1件、戦後イギリス女性作家の論集1件)、国外で2つの出版企画(アンジェラ・カーターの論集2件)に参加することになった。そのうち1件「覇権の脱構築:レベッカ・ウェストのフェミニスト戦争論」は脱稿し、2022年度に論集『書くことはレジスタンス:第二次世界大戦とイギリス女性作家たち』として音羽書房鶴見書店より刊行される。いずれもポストヒューマン的な表象と歴史的な背景、階級やジェンダーや人種などの関係性を論じ、また日本の研究者としての視点を盛り込んだ研究となる。 2022年3月にイギリスのチチェスター大学で開催されたSymposium: Angela Carter: A Radical Prescience?で、オンラインによる基調講演“Angela Carter as a Global Literature Author”を行った。また2022年の1月から2月にかけてPosthuman Perspectivesと題したオンラインワークショップを開催するなど、国内外で精力的に研究活動することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のために海外でのアーカイブ研究は行うことができなかったものの、国内でできるやり方で研究を進めることができた。前半はイギリス女性作家レベッカ・ウェストのフェミニスト戦争論について研究を進め、非人間化の脱構築的な文学化について検討し論文化した。後半は、アンジェラ・カーターのおとぎ話を世界文学として位置づけた上で、翻訳不可能性を持つ他者をどのように扱うのか、グローバル社会のポストヒューマン論を用いて研究し、英国チチェスター大学での基調講演として発表した。2022年1月から2月にかけては、ポストヒューマンの視点から、講師3名(Daniela Kato、 Luciana Cardi、中村麻美)を招いたオンラインでの連続ワークショップを開催した。論文一本脱稿、共著書一本刊行、基調講演一本発表を実現させた。さらに、2022年度以降に執筆に取り掛かることとなる企画を4件得ており、今後の研究予定がしっかりと立てられている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はMargaret AtwoodのHandmaid's Tale論をMary ShelleyのFrankenstein研究と接続させて論じる研究を最初に行い、次にAngela Carterの翻訳をめぐる語りとポストヒューマンの表象を接続させて論じる研究を行う。三つ目に、Angela Carterの日本を題材とした短編における戦後日本の社会分析について論じる予定である。 これらと並行して、人形とポストヒューマンの語りを共著の論集として構想し、具体的な出版企画を練り上げる予定にしている。 2022年度にアーカイブ調査が可能であるか、まだ先が見通せないが、可能であれば実行したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
アーカイブ調査のために海外出張を計画していたが、コロナ禍で行くことが叶わなかった。2022年度はぜひアーカイブ調査のために大英図書館への出張を行い、調査の結果を研究に取り入れたい。
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