研究課題/領域番号 |
20K00532
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中川 成美 立命館大学, 文学部, 教授 (70198034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 世界文学 / 日本文学 / プロレタリア文学 / 旅する日本語 / 植民地主義 / ジェンダー理論 / 近代性(Modernity) / 戦争と災禍 |
研究実績の概要 |
本研究は1990年代後半から活性化した「世界文学」概念をめぐって、日本文学研究においてそれがどのように有益に用いられるかを考えようとするものである。それは同時に日本文学をどのようにとらえなおしていくかという課題が浮上し、今後活発な議論が重ねられていくことを期待するものである。「世界文学」という概念が、あらたな日本文学研究の方向を指し示していく可能性に向けての基礎研究として、本研究プロジェクトは構想された。具体的には1)近代性(Modernity)2)戦争と災害(Disaster)3)ジェンダーとクィア理論(Gender and Queer)4)植民地問題(Colonialism)の4つを理論構築のテーマとして立てている。その成果としては2022年3月に西成彦との共編著『旅する日本語ー方法としての外地巡礼-』を上梓した。 しかしながら、現在のところ研究全般はやや遅延しており、十分の成果を得られていない。そこで近年私が特にかかわってきた、日本プロレタリア文学研究をあらたな研究基軸に繰り入れ、新しい世界文学の可能性を、社会主義文学の生成と破綻、また再生という歴史的視野を導入しながら、伸展させたいと考えている。そのため次年度は資料発掘や調査、理論構築に向けての勉強会など、基礎研究を確実に整備したいと考えている。国際ワークショップや国際研究集会の開催、および協力について、コロナ状況を見ながら柔軟に対応していきたい。当初、考えていた海外日本文学研究者との情報交換などについては個人レベルではオンラインにて続行しているが、次年度以降将来的な研究展開を視野に据えたコロナ禍における国際ネットワークの枠組みについても新たに試行していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
若干の資料収集、および設備機器の整備を本年度には行った。また研究成果を踏まえた論文集『旅する日本語ー方法としての外地巡礼-』を出版した。これは「日本語」ということを基軸に、世界文学との関係を考えようとした論集である。ひとつのステップが進行したと考えている。また新しい研究基軸とした「日本プロレタリア文学」に関しては「TENKO:Cultures of Political Conversion in Transwar Japan」(Routledge,2011)に論文を掲載した。今後、このメンバーとも連携して基礎理論を深めていきたい。 本年度は私自身の健康問題、およびコロナ禍において十分の研究調査ができなかったが、今後の状況の好転を期待して、基礎研究を中心とした次年度以降の研究促進を図っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、コロナ禍の状況をみながら、国際連携をとりながら、基礎研究を中心に一層の研究促進をはかっていきたい。しかし、広範な資料調査や国際ワークショップなどが制限される現状の中で、新資料の発掘や理論研究などの基礎作業を中心に今後展開したいと考えている。また、あらたな研究基軸である「プロレタリア文学」、「社会主義文学」という項目について、関係諸学会や研究者とも連携して、次年度以降研究促進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の資料収集、および設備機器の整備を当該年度に行ったが、当初予定していた研究会、海外ワークショップ、また海外資料調査などが、私の健康上の問題、およびコロナ禍によってほとんど執行できなかった。 次年度は状況の変化もあり、また私自身の健康問題も快方に向かっているので促進したいと考えている。
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