研究課題/領域番号 |
20K00534
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
遠藤 志保 北海道博物館, アイヌ民族文化研究センター, 研究員 (90761635)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 口承文学 / 話型 |
研究実績の概要 |
本年度は、先行文献に集成されているアイヌ文学の分類・整理及び分析を行った。 本研究において、先行文献として用いているのは、1914年~1986年の間に公刊されたアイヌ文学資料を集成している、稲田浩二(責任編集)『日本昔話通観 第1巻(アイヌ民族)』(同朋舎、1989年)(以下、『通観』と略称)である。 『通観』では、アイヌ口承文学のジャンルが取り混ぜられて収録しているが、本研究におけるテーマである話型の分析にあっては、ジャンルごとに分けて分析する必要がある。そのため、本年度はまず、『通観』に収録されている約600の典型話をジャンルごとに分け、大きく分類しなおす作業を行った。 次に、『通観』において記述されている話型記述を、アイヌ口承文学の特徴に即するように記述しなおすこととして、ルールを策定することとした。たとえば、『通観』においては、「形式化した数-6」などもモチーフとして取り上げられているが、この場合の「6」はアイヌ口承文学において特有の表現形式で、多数であることを表す。そのため、話型そのものとは関係がないことから、本研究においては話型を構成するモチーフとしては採用しないなどのアイヌ口承文学の、表現も含めた特徴に根差した整理である。 また、本研究においては、『通観』以後に公刊・公開されているアイヌ口承文芸テキストも分析対象として視野にいれている。そのため、現在までに公刊されているアイヌ口承文芸については、『通観』に所収されていないものについても、広く収集・整理を行うこととした。『通観』以後のアイヌ口承文芸の公刊・公開の流れとしては、インターネット上のアーカイブにおける公開も目立っており、出版以外にもその過程で、本年度の成果として、沙流地方で生まれ育った、平賀サダ(サダモ)氏が語った口承文芸リストなどを含めた書誌情報について、共著としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画においては、本年度は、先行文献である『通観』に収録されている典型話をジャンルごとに分け、大きく分類しなおす作業のほか、ジャンルごとにテキストの話型の記述を行う予定であった。 実際には、本年度は、前者のジャンルごとに分ける作業までは実施し終えたが、アイヌ口承文学の特徴に根差した記述形式を定める作業に想定よりも時間がかかったことから、テキストの話型の記述についてはほとんど着手できず、全体として進捗としては遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
ジャンルごとに話型を記述する今後は、本年度で話型を記述するためのルールが整理できたことから、当初計画で策定した手順どおりに、先行文献である『通観』の典型話を対象として、アイヌ口承文学のジャンルごとに話型を記述する作業を進める。。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた人件費が使用できなかったことが理由である。 これは、データ入力のために人件費の使用を予定していたが、どのデータを記述するために、アイヌ文学の特徴に則したルールづくりが必要になるが、そのルールの策定に想定よりも時間がかかってしまったことによる。データ入力において、途中からルールを変更すると作業のやり直しになる可能性もあることから、準備段階で慎重を期することにしたものである。 本年度でデータを記述するためのルールが整理できたことから、次年度の人件費使用にあたっては、計画どおりに実施できるものと見込んでいる。
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