研究課題/領域番号 |
20K00538
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
崔 貞冴 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (70821908)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 使役構文の連続性 / 話者の認識 / 認識的先行 / テ形複文構文 / 他動性 / 広義の使役性 / 似通い文 |
研究実績の概要 |
本研究は,他動詞による単文構造を起点とし,使役接辞(日本語ではsase,韓国語ではi/hi/li/ki)による使役動詞の構文を中間構造と位置づけ,日本語ではテ形節,韓国語では-eoseo形節における複文構造へと到る,つまりこれらの3段階の検証を通じて,使役状況による構文の連続性を明らかにすることを目的としている。 「AがBにXを依頼し,Xが遂行される」という同様の事態の基に,話者の認識によって,大きく他動詞単文構文「①AがXをする」,他動詞複文構造「②AがBに頼んでXする」,使役複文構文「③AがBに頼んでXをさせる」,使役単文構文「④AがBにXをさせる」という4つ異なるタイプの構文が表れることに着目し,単文構造(①と④のタイプ)とテ形節の複文構文(②と③のタイプ)までを統合した分析によって使役構文の連続性が示せるようにした。そして,他動詞複文構文(②タイプ)とも使役複文構文(③タイプ)とも表せる従来の「似通い文」という分析も,本研究では話者の認識と言う観点から検証を行っている。 また,本研究は,複文構文では話者の視点に要る「認識的先行」(崔2018)が複文構文の使役性に深く関わっていること,つまりテ形節複文構文の持つ使役性について議論を行っている点で,単文構造を中心に構文の主語が使役主体であるか動作主体かによって構文の意味関係を展開してきた従来の使役構文とは異なるものである。 以上の結果はまだ日韓語それぞれ個別のの研究結果の段階であり,今後対照研究へと進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度(2021年度)は,予定通り,日本語と韓国語のそれぞれの分野の学会(前者は日本語文法学会,後者は朝鮮学会)を通して,本研究の研究成果の発表を行っている。そして,本年度(2022年度)の新たな目標として,それぞれの学会誌への論文投稿および日韓対照研究の観点から検証を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,2021年度に行った発表内容を基にその内容を整理および修正を行い,それぞれの学会誌(日本文法学会の日本語文法と朝鮮学会の朝鮮学報)に論文を投稿することをその目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で全ての学会がオンラインで開催され,国内外の旅費の支出がなかったため,次年度使用額が生じた。2022年度の使用計画は大きく以下2つ通りである。 (1)2021年度に幾つかのオンライン学会を参加した際,現在使用しているデスクトップの調子によるフリーズを何度か経験している。よって,2022年度もしばらくオンラインによる学会が継続されることから,今後円滑な学会参加に対応できる機種変更を考えている。 (2)2022年度後期の学会が対面で開かれる際,その旅費として考えている。
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