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2022 年度 実施状況報告書

母語獲得における刺激の貧困と構造依存性の実証的研究:日本語の副詞節と主格主語から

研究課題

研究課題/領域番号 20K00548
研究機関北九州市立大学

研究代表者

團迫 雅彦  北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (50581534)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード言語獲得 / 生成文法 / 主語 / 格 / 副詞節 / ラベリング / 刺激の貧困 / 構造依存性
研究実績の概要

本研究は、入力に含まれない統語範疇に言及した統語的制約が関与した現象を用いて、構造依存性に関する言語知識を子どもが有するかどうかを明らかにすることで、生成文法理論の理論的前提である「刺激の貧困」の妥当性を検証することを目的とする。これにより、従来の構造依存性の獲得研究が持つ、要素間の線形順序という統語情報を用いた類推による規則の一般化の問題を回避できる。2022年度は、新型コロナウイルスの影響が長引き、保育施設での幼児を対象にした実験の実施が非常に困難であった。したがって、感染症の影響を受けない形にするため、前年度に引き続き、以下のような研究を中心に進めた。具体的には、(1) 副詞節と主語の発話データの収集と分析、(2) 「日本語の主格主語はそれを認可するTP内に留まらなければならない」という統語的制約に着目し、TPを含むかどうかにより副詞節における主格主語の解釈が異なる文の理解実験の準備、(3) 発話コーパスを用いた副詞節および主格主語の入力の質的・量的分析、(4) 動詞句内に音形を持つ主語と目的語の生起に関する研究の批判的検討、(5) 幼児言語を対象にしたラベリング分析に関する検討を行った。(1)-(3)については、2022年9月に言語科学会第23回年次国際大会(JSLS2022)のシンポジウムで口頭発表を行い、Studies in Language Sciences: Journal of the Japanese Society for Language Sciences 第21巻で論文を発表した。また、2022年11月にボストン大学で行われたBUCLD 47でポスター発表を行った。(4)については、2022年11月に日本英語学会第20回大会で口頭発表を行い、JELS 20でその内容を論文として発表した。(5)については、北九州市立大学基盤教育センター紀要第40号に論文として投稿した。また、本年度の研究の意義は言語獲得における副詞節と主語の関連性について研究を進める上で必要な準備を進めることができた点にあるといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルスの影響により、実地調査は困難であったが、調査に向けての事前準備、コーパスデータの整理は進んだため、おおむね順調に進展したと判断した。

今後の研究の推進方策

新型コロナウイルス感染が5類指定を受けたため、当初予定していた計画を感染に注意しながら進めることができると考えている。。
(1) 調査の被験者について:理解実験は、実験のキャラクターが状況に合った正しいことを話したかどうかを被験者に問う真偽値判断課題(Truth Judgment Task)を採用するため、被験者には大きな負担はないように思われる。ただし、感染の状況次第では、保育施設と相談し、十分配慮を行った上で調査を行いたい。
(2) 副詞節と主格主語(あるいは「ハ」を伴う主題)の入力の頻度を、発話コーパスであるCHILDES (MacWhinney 2000) を用いて調査する。入力の質的・量的分析により、副詞節の場合に「刺激の貧困」が確率論的に成立しうるかを考察する。
(3) 子どもが自然発話として、どの時期に副詞節を産出できるようになるのかをCHILDES を用いて調査する。
(4) 分析および報告:SPSSなどの統計分析ソフトを利用して、コーパス調査・実験結果の分析を行い、研究成果を随時、学会や研究会などで発表する。その場でいただいたコメントおよび質問を参考にして、追加実験や今後の研究に役立てていく計画である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた実験に対する謝金も調査自体が行えなかったため、支出がなかった。2023年度は、調査・実験を実施し、人件費・謝金に充てることを計画している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Syntactic Position of Nominative Subject in Child Japanese2023

    • 著者名/発表者名
      Masahiko, Dansako
    • 雑誌名

      Studies in Language Sciences

      巻: 21 ページ: 13-23

    • DOI

      10.34609/sls.21.1_13

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 英語を母語として獲得する幼児のSubject-in-situ generalizationと統語構造2023

    • 著者名/発表者名
      團迫雅彦
    • 雑誌名

      JELS

      巻: 40 ページ: 2-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本語を母語として獲得する幼児の二語期段階におけるラベリングについて2023

    • 著者名/発表者名
      團迫雅彦
    • 雑誌名

      北九州市立大学基盤教育センター紀

      巻: 40 ページ: 1-14

  • [雑誌論文] Availability of Functional Categories in Child Grammar: Movement Effect in English and Japanese2022

    • 著者名/発表者名
      Masahiko, Dansako
    • 雑誌名

      Doctoral Dissertation (Kyushu University)

      巻: - ページ: 1-222

    • 査読あり
  • [学会発表] Syntactic position of nominative subject in child Japanese2022

    • 著者名/発表者名
      Dansako, Masahiko
    • 学会等名
      言語科学会第23回年次国際大会(JSLS2022)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 英語を母語として獲得する幼児の Subject-insitu generalization と統語構造2022

    • 著者名/発表者名
      團迫雅彦
    • 学会等名
      日本英語学会第40回大会
  • [学会発表] Subject interpretation in main and subordinate clause in child Japanese2022

    • 著者名/発表者名
      Dansako, Masahiko
    • 学会等名
      The 47th Boston University Conference on Language Development (BUCLD47)
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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