| 研究実績の概要 |
最終年度となる2024年度は、データ収集およびマクロ・ミクロ両視点からの分析を継続し、口頭発表や学術論文、編著書の形で研究成果を公開しながら、これまでの研究内容を補足・充実させるとともに、総括的かつ総合的な分析・研究を展開した。まず、ロシアのウクライナ侵攻による影響でサハリンでの現地調査実施の見通しが立たないことから、日本への一時帰国者からのデータ収集を継続した。9・10月に札幌・稚内で計17人より質問票・語彙発話データ・談話データを収集した。収集後は、順次、談話データの文字起こし、コーディングを進めている。 マクロな分析に関しては、日・朝・露のコード・スウィッチングおよび言語交替に関して日本言語政策学会にて「唐辛子увожу всё туда с собой, и cimchi 作ります―激変する言語政策に翻弄された樺太日系・朝鮮系話者の多言語使用とその可変性―(原文のcimchiはハングル表記)」として公表し、現在は投稿論文として精緻化を図っている。さらに、当該分野では欧州最大規模の国際学会「ICLaVE 12」にて、言語消滅に関するパネリストとして招聘され、樺太と同時期に植民地であったパラオとの比較研究について報告した。 ミクロな分析に関しては、樺太日本語で観察された朝鮮語とロシア語の影響に関する論考「樺太日本語における朝鮮語・ロシア語の影響 ―言語接触に誘発された音声変異に関する探索的研究―」が学術雑誌『方言の研究』より刊行された。また方言接触とコイネー化に関する論考が編著書『Koine, Koines, and the Koineization of Modern Greek』に収録された。今後は、コリアン・ディアスポラにおける方言接触とコイネー化に関する研究において、こうした観点を活かし、大規模な人口移動を伴った言語変容のメカニズムの解明に寄与したい。
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