研究課題/領域番号 |
20K00554
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
平岩 健 明治学院大学, 文学部, 教授 (10572737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不定語 / 量化 / とりたて詞 / 否定極性表現 / 自由選択 / 比較構文 / 示差的格標示 / 畳語 |
研究実績の概要 |
2年目の本年度は引き続き基礎的研究期間と位置づけて不定語に関する先行研究を精査し、 日本語と沖縄語の不定語システムの統語的側面の記述とその比較対照研究に重点を置いた。ただし、フィールド調査研究に基づく沖縄語とGur諸語の記述研究は今年もコロナウイルスにより中止を余儀なくされた。 本年度は3本の論文を出版した。まず、Ghana大学のGeorge Akanlig-Pare氏との共同研究により、Gur諸語の一つであるBuli語における極性表現を詳細に記述し、理論的考察を行った。Buli語の否定極性表現は従来の分類に合致せず、弱い否定極性と強い否定極性両方の特徴を示すことを明らかにし、このような振る舞いは名詞内部の機能範疇のどこかコピー対象となるのかとコピーと否定要素の接辞化の相互作用によって説明されることを提案した。 次に、沖縄語の主語名詞句および所有者名詞句がそれぞれ二種類と三種類の示差的格標示を示す現象を考察した。この現象はいわゆる有生性階層に従っていることを明らかにし、沖縄語は日本語と同様、形態的な一致現象は観察されないものの、実際には有生性素性の一致メカニズムが機能しており、それにより主語名詞句および所有者名詞句の示差的格標示が決定されていると考えられることを主張した。 最後に、中西公子氏との共同研究により、日本語の比較構文に生起する不定語の研究を行った。様々な診断テストにより、この不定語は自由選択表現の統語構造と意味解釈を持つことを明らかにし、その裸不定語は無条件節と同じメカニズムで認可されていることを主張した。 これらの論文はいずれも2022年1月のアメリカ言語学会で口頭発表を行い、Proceedings of the Linguistic Society of AmericaのVol.7に出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度同様、コロナウイルスの感染拡大状況のため、予定していた西アフリカの言語のフィールド調査研究は研究協力者に日本に来てもらうことができず延期状況が続いている。また、沖縄語のフィールド調査研究もインフォーマント話者がご高齢であるためオンラインでの実施を検討しているものの、依然対面での実施は不可能で再開の見通しは立っていない。しかし日本語の不定語、特に存在量化表現や否定極性表現、自由選択表現については順調に研究が進んでいる。またこれまでに蓄積したデータからある程度、Buli語の否定極性表現や沖縄語の名詞句、不定語の構造についても研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
日本語を中心とした研究計画は特にコロナウイルスの影響を受けないため、研究計画通りに研究を推進する予定である。一方、コロナ禍で沖縄語のフィールド調 査研究の再開の見通しは立っていないが、状況を見つつフィールド調査を行いたいと考えている。セルラーモデルのiPadを協力話者の方に貸与し、Zoomなどを使用して遠隔での調査研究を行う方法も模索している。Gur 諸語のフィールド調査研究は協力者のインターネット環境もあり遠隔での実施は困難であるため、メール等により代替を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大状況のため、予定していた旅費はすべて未使用となり次年度使用額が生じた。日本語を中心とした研究計画は特にコロナウイルスの影響を受けないため、研究計画通りに研究を推進する予定である。今年度中には徐々に対面での共同研究やフィールド研究が再開できると見込んでいるが、セルラーモデルのiPadを協力話者の方に貸与し、Zoomなどを使用して遠隔での調査研究を行う方法も模索している。
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