研究課題/領域番号 |
20K00554
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
平岩 健 明治学院大学, 文学部, 教授 (10572737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 不定語 / 琉球諸語 / 沖縄語 / 極性表現 / 全称量化 / 自由選択 / 選言 |
研究実績の概要 |
本年度はようやくコロナ禍が収束し、三年間全く行うことができなかった沖縄語の不定語システムの現地調査を再開する目処がたった。ちょうどサバティカル研究機関とも重なったため、集中的に現地調査を行うことができた。この予備的研究により沖縄語の形態的には全称量化表現に相当するものが、実は自由選択表現である可能性を示した。これは日本語と異なり「モ」に相当する形態素である「ン」の統語位置の違い、およびコピュラが生産的に脱落することが可能であえるという違いから生じるものであることが示唆された。また存在量化の不定語に生起する「ガナ」は選言形式ではないことから、存在量化不定語表現をもたらす要素は選言とは無関係であることを示した。まだ予備的な研究であるため、今後のさらなる詳細な研究調査が不可欠である。 研究成果は日本語の選言表現や存在量化表現が極性表現ではないことや日本語の種々の不定語表現が古代日本語より歴史的変化を経て成立していることを理論的な観点から明らかにし、West Coast Conference on Formal Linguistics (WCCFL 41)、Workshop on Theoretical East Asian Linguistics (TEAL13)、Current Issues in Comparative Syntax 2: Boundaries of Ellipsis Mismatch)といった国際学会、及びJohann Wolfgang Goethe-Universität Frankfurt am Mainにおける一連のセミナーで研究発表を行なった(中西公子氏との共同研究を含む)。また、沖縄語の予備的調査研究の成果についてはTheoretical Approaches to Ryukyuan Linguistics 1において研究発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年はコロナ禍も明け、サバティカル研究期間ともタイミングよく重なったため、三年間一切行うことができなかった沖縄語の現地調査を集中的に行うことができ、基礎的なデータ収集と予備的な理論分析が大きく進展した。一方で為替の悪化と物価の高騰により国際的な研究協力は限定的となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに不定語の比較対照研究を推進し、国際学会で研究成果を発表しつつ、最終的には本研究課題の研究成果を国際ジャーナルに発表し、最終的には中西公子氏との共著書籍としてまとめる計画である。また沖縄語の不定語の研究については次の科研費課題として集中的に研究を行い、将来的には琉球諸語の不定語システムの比較対照研究へと展開する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で海外へ研究出張ができずまた沖縄での現地調査もできない状況が三年間続き、後者については本年度ようやく再開できたが、前者については完全には再開できなかったため。
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