研究課題/領域番号 |
20K00561
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
丁 仁京 福岡大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50759264)
|
研究分担者 |
林 ひょん情 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (30412290)
玉岡 賀津雄 名古屋大学, 人文学研究科, 名誉教授 (70227263)
滝浦 真人 放送大学, 教養学部, 教授 (90248998)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 韓国語 / 語用論 / 敬語変化 / 尊敬接辞-si-の対者敬語化 / 容認度調査 |
研究実績の概要 |
本研究は現代韓国語の敬語使用の変化を敬語の使用原則に生じている変化であると捉え、聞き手の違いによる容認度を包括的(男女別、世代別)に調査することを通して、語用論的諸要因を明らかにすることを目的とする。令和2年度は、当初の研究計画に基づき、関連分野に関する先行研究をレビューするとともに、「尊敬接辞-si-の対者敬語化」についての質問項目を選定し調査を実施した。まず、接客・サービス業界で使用されている各種敬語表現のデータを収集して、分類・抽出した事例をもとに、諸条件をコントロールしたデザインの調査を企画した。「聞き手」の観点で、①モノに対する敬語「事物尊称」の使用、及び、②自分達に対する敬語「自敬敬語」の使用がどの程度まで受け入れられているか、またその容認度に影響する要因が何であるかを検証した。調査は、ソウル・京畿道在住の韓国語母語話者20代から 60 代以上の5世代について、男女各 20 名の合計 200 名を対象に、13の場面及びイラストをランダムに提示し、それぞれの容認度を5段階のリッカート尺度で判定してもらった。分析では、容認度を9つの変数で予測する決定木分析を用いた。決定木分析の結果を要約すると、「事物尊称」(上記①)がある程度容認されていることが明らかになった。また、容認度への影響要因としては、事物尊称-si-の有無と待遇形式とに関わるパターンに加え、言及内容における客の関与度に差がある文タイプ、さらには回答者の世代が抽出された。本調査の結果、新奇な敬語と言える事物尊称の使用が、対面的な話し手―聞き手関係における「聞き手意識」に影響されている可能性が示唆された。本結果は、2021年6月に開催される日本言語学会第162回大会にて研究発表の予定。なお、「自敬敬語」(上記②)については、令和3年度にデータを分析・考察し、研究発表を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の計画は、関連分野に関する先行研究をレビューするとともに、「尊敬接辞-si-の対者敬語化」についての質問項目を選定し、調査を実施することである。本年度はCovid-19の影響により、直接調査ではなくオンラインでの調査へとやむを得ず変更することになったが、当初の計画通りのデータ収集ができた。また、分析も当初の計画通り順調に進んでおり、その一部は日本言語学会第162会大会にて報告予定となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、「自敬敬語」のデータを分析・考察し、研究発表を行う。また、「意思表現の対上位者的行為指示表現化」について、関連分野に関する先行研究をレビューするとともに、質問項目を選定し調査を実施する。令和3年度もCovid-19の影響が続く見通しであることから、オンラインでの調査を計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はCovid-19の影響により、出張が制限された。特に、予定していた海外渡航ができない等、また学会参加や研究会議などが延期・中止になったため、次年度使用額が生じてしまった。使用計画としては次年度のオンライン調査費用、学会参加や研究会議のための旅費に当てる予定であるが、次年度もすでにCovid-19の影響が出ていることから、研究計画や使用計画の見直しを含め、今後も助成金の適切な使用に努めていきたいと考えている。
|