研究課題/領域番号 |
20K00564
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山村 崇斗 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30706940)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生成統語論 / 史的統語論 / 分離等位接続主語 / 古英語 / 中英語 / 初期近代英語 / 後期近代英語 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、史的英語における不連続等位接続を史的電子コーパスを利用して調査を進めた。令和3年度前半は、古英語と中英語の調査を進め、生成統語理論と史的言語変化の関連を扱うGelderenの文法化理論を援用し、英語の等位接続構造の史的変化の可能性を探った。前年度、例えば古英語のHengest feng to rice and AEsc his sunu 'Hengist and his son Oisc succeeded the kingdom'では、Hengest and AEsc his sunu という等位構造からand AEsc his sunuが文末へと移動したという分析が妥当だと主張したが、これを土台に古英語と中英語の文法の違いを明らかにすることを試みた。しかし、決定的な結論には未だ至れていない。 令和3年度後半は、古英語から後期近代英語に亘って調査を進めた。特にTaylor and Pintzuk (2017)での指針に一部従いながら、助動詞相当語と語彙動詞の両方が含まれる文に限って調査を進めた。語順が比較的自由であった時代の英語であっても、助動詞相当語と語彙動詞の2つの要素の生成統語理論上の位置が想定しやすく、それらを基準とすることで、分離した第一等位項と第二等位項のそれぞれの位置を相対的に導き出しやすくなる利点があるためである。この手法によって不連続等位接続の文は6タイプに分けられ、各時代における各タイプの分布が明らかにすることができた。これにより、等位接続構造内部の成り立ちや分離可能性についてや、分離した等位項の構造的位置についての考察をさらに進める事ができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
助動詞相当語と語彙動詞の両方を含む事例については、古英語から後期近代英語に至るまで、現在利用している史的電子コーパスに収録されている全てのテクストにおいて調査が終わっており、検索された事例についての記述もできる限り詳細に行っており、ほぼ完了したといえる。しかし、助動詞相当語を含まない事例に関しては、古英語のみで大まかな記述までで留まっており、調査が進んでいない。これは、語順の自由度だけでなく、動詞の項構造の違い(例: 自動詞と他動詞の違い)もあって、分類の指針が定められなかったことに原因がある。 また、統語分析の提案や妥当性の検証は、令和3年度後半に入ってから、コーパスの検索結果の分類や統計計算の作業に従事していたため、ほとんど行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現状、助動詞相当語を含まない事例に関する指針作りには目処が立たない状況であるので、令和3年度に明らかにした助動詞相当語と語彙動詞の両方を含む事例の分布の説明を可能とする統語分析を考え、英語史における各時代の英語の文法がどのように特徴付けられているかを明らかにすることに注力する。その際には、通言語的な視点も取り入れて、縦の関係だけではなく、言語間の横の関係への広がりにも貢献することを考える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルス感染症の対策が継続されたため、当初予定していた出張が国内外問わず規制されていたため、出張費を使わなかったことが主に挙げられる。 (使用計画)オンライン開催の学会を利用し、積極的に発表機会を捉える。最終年度に際して、執筆した論文の英文校閲がこれまでよりも多く見込まれている。
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