研究課題/領域番号 |
20K00564
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山村 崇斗 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30706940)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 分離等位接続主語 / 不連続等位構造 / 史的統語論 / 生成統語論 / 位相 / 付加詞条件 / 単一事象条件 |
研究実績の概要 |
名詞句の等位接続構造の分離(例: John danced at the party and Mary)は、現代英語では許されないが、昔の英語のテクストからは当該の事例が一定量観察されることが、先行研究及び、前年度までの調査から判明している。本年度も引き続き、当該構文の調査を行い、これを可能にしていた要因の解明及び、生成文法理論の枠組みでの説明を目標として研究を進めてきた。当初の予定では、当該構文が本当に現代英語で観察されないかについても調査を行うつもりであったが、これに関しては、過去の文献からのデータに依るに留まった。昨年度の研究で、等位接続名詞句分離の歴史上の分布を明らかにした。それによれば、逐語的には'that he should and his offspring his oath keep'というように第一等位項と第二等位項の間に助動詞が介在するような事例が見つかっている。本年度は、こういった事例が理論的にどのように派生されうるかについて主に考察した。伝統的に等位構造の一部のみに対して要素の抜き出しをすることはできないと考えられている(*What table will he put the chair between __ and some sofa?)。等位構造からの要素の抜き出しを可能とする条件や環境を明らかにするため、等位構造を生成統語論の位相の概念と結びつける研究や、意味上の特定の条件下では等位接続構造が要素の抜き出しを許す(例: What kind of herbs can you eat __ and not get cancer?)という研究に当り、理論的な可能性を指摘した。統語分析については、日本英文学会中部支部第74回大会におけるシンポジウム『位相を再び考える』で口頭発表され、内容は大会プロシーディングスに掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に行った助動詞を含む事例に続き、助動詞を含まない事例の調査と現代英語の調査を予定していたが、統語分析の検討に多くの時間が割かれ、言語データの調査に進むことができなかった。動詞句の等位接続と名詞句の等位接続が本質的に異なる可能性があるため、検討した統語分析が等位接続名詞句の分離への援用に適さないことも考えられることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
動詞句と名詞句では等位接続の性質が異なる可能性があることを念頭に、統語分析を改めて進める。等位接続の分離は統語的な現象ではなく、音韻的具現化のみが関与する可能性も含めて検討する(Goodall 1983, 岩田 2008など)。また、通言語的な事例にも目を向けて可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症蔓延のため、当初予定になっていた国内外の学会への出張が取りやめになったため、旅費の支出が低調となった。当該残額については、今年度の出張や人件費にかかる経費に充てる予定である。
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