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2022 年度 実施状況報告書

現代フランス語話し言葉における談話標識と言語変異の記述

研究課題

研究課題/領域番号 20K00566
研究機関東京外国語大学

研究代表者

秋廣 尚恵  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60724862)

研究分担者 川口 裕司  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20204703)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードフランス語話しことば / 談話標識 / 言語変異 / 用法拡大 / 中間言語
研究実績の概要

研究代表者の秋廣尚恵は、引き続き、フランス語ネイティブ話者の使用する談話標識について、通時的変異と文体的変異の両面から、記述的研究を進めた。とりわけ、今年度は「限界」を意味する limite という名詞を取り上げ、その用法の拡大が進み、2000年代以降、インフォーマルなフランス語の話し言葉において談話標識として用いられるようになった点について焦点を当てて研究した。研究にあたり、Jeanne-Marie Debeisieux パリ第3大学教授のアドバイスを受けた。東京外国語大学の収集した話し言葉コーパス、及び、オンラインで公開されている「現代フランス語参照コーパス」、さらに「オルレアン社会言語学的研究コーパス」を用いつつ、limite の談話標識化と、そのことにより、従来から存在するイディオムである a la limite との競合関係が生じている点について、2023年1月にオルレアン大学で行われた国際学会「パロールは何を表すか?」において発表を行った。
研究分担者の川口裕司は、博士課程の大学院生と共に、引き続き学習者の話し言葉コーパスにおける談話標識の中間言語的変異の研究を進めた。具体的には、ben と bon という2つの談話標識について比較しつつ、記述的研究を行い、その成果を2022年12月に国際学習者音韻学会にて発表した。
また、今年度、さらに話し言葉コーパスの拡充を進めるため、東京外国語大学にフランス語圏から留学してきている学生10名をインフォーマントとして、自由会話を5時間ほど録音した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究代表者の秋廣尚恵の健康上の理由で休職、就業制限がかかってしまったこと、また、新型コロナウイルス感染拡大の継続とウクライナ情勢の勃発なども重なり、ヨーロッパとの行き来が物理的に難しく、とりわけ、現地での文献、インフォーマント調査が不可能になってしまった。さらに、現地から研究者を招待することも同様に極めて難しかったことから予定されていた研究交流もオンラインやメールでのやりとりに限られてしまった。以以上の理由から、予定していた研究成果が十分に得られなかった。
しかしながら、日本で10名の留学生の協力を得て、5時間ほどのコーパスの収集やインフォーマント調査ができたことで、コーパスの拡充については、十分とはいえないまでも、進めることができた。また、研究代表者、研究分担者ともに、これまでに積み重ねてきたデータを利用して、それぞれの研究課題の研究を進め、その成果を学会発表(秋廣については、就業制限により出張不可であったため、オンラインで学会に参加し発表)することができた。
また、予算を文献の購入に充てることで、先行研究を十分に吟味し、理論的研究を進める基盤をなすことができた。
以上の理由から、研究の遅延は深刻なものではなかった。

今後の研究の推進方策

研究代表者の秋廣尚恵の就労制限が解除となり、状況が可能であれば、海外調査に出かけ、現地にて、フランス語の話し言葉を20時間から30時間ほど収録したいと考えている。さらに、これまでのデータの整備と、今年度収集したコーパスの転写とアノテーション作業を完了する。また、海外からの研究者の招聘も検討する。
さらに、秋廣尚恵は、limite をはじめとする様々な「近似的標識」が談話標識化する語彙を集め、語彙の違いが談話標識化の違いにどのように影響を与えているのかを研究する。分担者の川口裕司は、引き続き、談話標識の地理的変異体、学習者の中間言語による変異体の研究を進める。
最終年度となるので、研究成果を国内学会、国際学会での発表、論文の形で積極的に発信する。そのための校閲代、旅費などに残された予算を使用する。

次年度使用額が生じた理由

2021年11月から2022年5月まで研究代表者の秋廣が健康上の理由で休職し、それ以降も就業制限により、国内外の出張が禁止となった。したがって、様々な調査の実施や国内外に出かけることもできず、学内でできることに研究が限られ、図書の購入と論文執筆、学内の留学生に依頼しての録音調査しかできなかった。
2023年度については、出張の許可が下りれば、海外渡航を考える。あるいは、海外からの招聘が可能であれば行う。また引き続き、コーパスの転写、インフォーマント調査に謝金を使い、成果物の作成に費用を用いる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 日仏翻訳と異文化交流の遠隔協働学習と学習者データの応用につ いて2023

    • 著者名/発表者名
      秋廣尚恵
    • 雑誌名

      Flambeau

      巻: 48 ページ: 86-103

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Le marqueur apres a l’oral : Une approche micro-diachronique, variationniste et interactionnelle2022

    • 著者名/発表者名
      Marie Skrovec Layal Kanaan-Caillol and Hisae Akihiro (2022)
    • 雑誌名

      Langages

      巻: 226 ページ: 117-131

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] アクセントの産出に影響を与える要因はどのように共起するか フランス語を母語とする日本語学習者の場合2022

    • 著者名/発表者名
      布村猛, 阿部新, 川口裕司
    • 雑誌名

      外国語教育研究

      巻: 25 ページ: 20-37

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Frequency and collocations in L1 and L2 French: Tres, beaucoup, mais, penser, and croire in Japanese learners’ speech2022

    • 著者名/発表者名
      Barcat Corentin, Detey Sylvain, Kawaguchi Yuji
    • 雑誌名

      外国語教育研究

      巻: 25 ページ: 130-148

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Le connecteur du coup dans le parler interactif et informel - productivite et multifonctionalite2022

    • 著者名/発表者名
      Hisae Akihiro
    • 雑誌名

      Synchronie et diachronie: l'enjeu du sens, Melanges offerts au Pr. Hava Bat-Zeev Shyldkrot, Bibliothque de Grammaire et de Linguistique

      巻: 67 ページ: 329-342

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Quelques problemes dans l'utilisation des Atlas Linguistiques pour analyser l'evolution du francais2022

    • 著者名/発表者名
      Yuji Kawaguchi
    • 雑誌名

      Synchronie et diachronie: l'enjeu du sens, Melanges offerts au Pr. Hava Bat-Zeev Shyldkrot, Bibliothque de Grammaire et de Linguistique

      巻: 67 ページ: 459-476

    • 国際共著
  • [学会発表] L’usage des expressions limite et a la limite dans l’oral de francais2023

    • 著者名/発表者名
      Hisae Akihiro
    • 学会等名
      Qu’est-ce que (se) representer la parole ? Hommage a Gabriel Bergounioux
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Projet de l’analyse contrastive de l’interlangue du francais basee sur la variation linguistique : Resultats des subventions de recherche scientifique2022

    • 著者名/発表者名
      Yuji Kawaguchi
    • 学会等名
      Journee d’etudes sur la variation linguistique du francais
    • 招待講演
  • [学会発表] Une etude synchronique des marqueurs discursifs bon et ben ; - donnees provenant de 14 enquetes du corpus PFC2022

    • 著者名/発表者名
      Takamasa Seimiya, Kaho Okawara, Yuji Kawaguchi
    • 学会等名
      Colloque (I)PFC
    • 国際学会
  • [学会発表] フランス語中・上級学習者が自由会話タスクで使用する動詞:ネイティブスピーカーの話し言葉コ ーパスとの比較2022

    • 著者名/発表者名
      時田朋子, バルカ・コ ランタン, 川口裕司
    • 学会等名
      外国語教育学会

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公開日: 2023-12-25  

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