「中国のモンゴル系民和土族語における文法記述と語彙に関する総合的研究」と題する本研究は、中国の甘粛・青海省におけるモンゴル系孤立的諸言語、通称「河湟語」の一つに位置付けられる土族語のうち、記述研究が従来不十分で、その実態があまり知られていない民和方言(話者人口推定1万人)、別名「民和土族語」を取り上げ、共時的見地から、当該言語の詳細な文法記述と語彙調査を徹底的に行うとともに、通時的見地からは、モンゴル祖語から受け継がれた共通特徴と当該言語で独自に発展させた改新特徴を弁別することにより、最終的にはモンゴル語族の中での民和土族語の位置付けを目指すものである。 2023年度、本研究の最終年度では、研究従事者は、民和土族語における形態・語彙的特徴、及び統語的特徴に関して、モンゴル国オラーンバータル市の国際学術会議で2度の研究発表とさらに2度の公開セミナーを、すべて異なるテーマでモンゴル語で行い、現地の研究者・専門家たちと学術交流を図った。さらに、民和土族語における若干の飲食物名の音声・意味変化に着目し、通時的観点からその変化の過程を解明すべく考察し、モンゴル語で学術論文を1本刊行した。 これら一連の研究成果の公開は、単に民和土族語の紹介にとどまらず、モンゴル語族における民和土族語の位置付けの問題に深く分け入り、当該言語の全容解明に一定の結果を残すことができたとともに、今後のさらなる研究への基盤を確実に築くことができたものと結論付ける。
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