研究課題/領域番号 |
20K00574
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
渡辺 真澄 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 准教授 (60285971)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動詞活用 / 一貫性 / 意味 / 音韻 / 2重機構仮説 |
研究実績の概要 |
動詞活用実験は、防音室で実験者と協力者が同席し、約1時間かけて協力者の発話を収集する。申請者の所属先には、附属診療センターがあり、免疫機能が脆弱な、障害をもつこどもから高齢者が通院しており、新型コロナウィルス感染を防ぐため、引き続き学生、教員の構内立ち入りが厳しく制限された。このため、実験は諦めざるを得なかった。 令和2年度にはそれまでの動詞活用実験から、活用型が1通りしかない一貫動詞は、活用型が複数ある非一貫動詞より活用が速い「一貫性効果」、非実在一貫動詞では同じ活用型の動詞数(タイプ頻度)の多い方が活用が速い「タイプ頻度効果」などが明らかとなった。これらの結果は、日本語の動詞活用が、規則とレキシコンからなる2重機構仮説では説明できないことを示す。 実験は実施できなかったため、本研究が進むべき方向、改善すべき点などにつき、英語などの屈折言語、日本語と同様に膠着語に関する文献を参照しつつ、再検討した。 ①タイプ頻度に加えトークン頻度も検討する。②動詞をカタカナで呈示すると(アルク、トジルなど)不自然な結果になったが、音声呈示では妥当と思われる結果が得られた。漢字とかな(歩く、閉じる)の刺激リストは可能か。③動詞活用能力と意味能力、音韻能力との関連を、健常者、失語症者を対象に調べる。 そのため、まず詳細な意味記憶検査を作った。英語圏で広く使われているケンブリッジ意味記憶検査バッテリーを下敷きに、日本人には適さない項目の刺激語や選択肢を入れ替え、令和2年度に若年健常者を対象に検査を実施し、刺激/絵の入れ替えがさらに必要なことが判明した。令和3年度は、それらを修正し、新たな若年健常者を対象に、語想起、線画の呼称、語と絵の照合、意味連合知識の各課題をリモートで実施し、妥当な項目が揃ったことを確認した。ついで音韻能力に関しては、失語症者を対象に作られた音韻検査を充実させ流用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記のように、動詞活用実験は、雑音が混入しないように防音室で実験者と実験協力者が同席し、発話する課題を行うので、新型コロナウィルス感染防止の観点から、令和3年度は予定していた実験を行うことは不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、新型コロナウィルスの影響をみつつ、状況が許すようであれば上記諸点を検討し、健常者対象の実験を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:前述のように、防音室で実験者と実験協力者が同席し、発話する課題を行う実験は、新型コロナウィルス感染防止の観点から、実施不可能であり、予定していた実験を行うことができなかったので、実験を次年度に持ち越すため。 使用計画:実験環境の整備、新型コロナウィルスの感染が収束し、実験可能な状況になれば実験協力者への謝礼、英国の共同研究者とのミーティングのための旅費、学会・研究会への参加等に使用予定である。
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