研究課題/領域番号 |
20K00577
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
FAN SauKuen 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (70327188)
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研究分担者 |
村岡 英裕 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (30271034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 外国人就労者の言語行動の軌跡 / 周移住期の概念構築 / 多職種連携によるサポート体制 / 精神医学分野の方法論と応用の可能性 |
研究実績の概要 |
従来の外国人支援では、来日前と来日後という言葉に示されるように、本人を国境で分断して捉える視点が前提とされることが多い。本研究は、外国人就労者自身の言語環境が激変する時期という意味で「周移住期」という概念を提案し、その「周移住期」に固有な言語問題を検討し、外国人就労者がどのように自らの言語環境を構築していくのかをモデル化をすることによって外国人支援の在り方に対して提言することを目的としている。本年度の研究実績は主に次の2種類になる。なお、本研究での外国人就労者には技能実習生、英語教師などが含まれている。 (1)精神医学の文献研究による基礎概念と方法論の把握:外国人支援に関する他分野の研究、とりわけ精神医学と周産期メンタルケアの知見の活用を目的に先行研究を集め、データバンクの作成をはじめた。 (2)立場の異なる外国人支援者へのインタビュー調査の実施と分析:昨年度は来日した・来日を控えている外国人就労者に調査を実施する予定を立てたが、新型コロナウイルス感染拡大による越境移動の厳しい制限の影響により、やむを得ず調査を次年度に行うことに変更した。一方で、特にベトナムから来日する技能実習生に関わる教育機関コーディネーター、派遣通訳、実習生を受け入れている企業の日本語教室の講師など、多職種の支援者へのインタビュー調査を実施することができた。それらの調査を通して、技能実習生の言語環境の変化に関する多方面からのデータを入手することができた。 上記の文献研究およびインタビュー調査の結果に基づき、以下の共同発表を申請したところ採択され、予稿集への掲載が決定された。 ファンサウクエン(研究代表者)・村岡英裕(共同研究者)「周産期精神医療研究は外国人就労者支援策に示唆を与えるか:周移住期の言語環境構築モデルについての試論」「日本言語政策学会第24回研究大会」2022年6月18日於京都大学
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究対象者とした技能実習生への調査が難しくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
出入国の制限が緩和されることを見据えて、以下の研究活動を企画している。 1.技能実習生の送り出し機関(国外)と受け入れ機関(国内)で勤務する支援者への調査(継続):ベトナムに加えて中国にある連絡窓口を通して担当者にインタビューを行うことによって、技術実習生の日本語と日本生活の教育の現状に関するデータを収集すると同時に、多職種連携による支援体制作りの観点を加えて、事例収集する。 2.「技能実習」の資格で来日した外国人就労者の調査:従来の言語バイオグラフィー研究とエスノグラフィー研究に加えて、精神医学分野の方法論を試み、技能実習生の言語環境と言語使用の実態と変化に関するデータを収集する。これらの調査を通して、彼らの言語習得や言語環境に関する事実を把握するだけではなく、実際の言語使用・不使用に関する文脈や、本人の言語使用に対する方針や計画などのメタ言語行動の特徴を観察することができると考える。 3.「技術・人文知識・国際業務」の資格で来日した外国人就労者の調査:「技能実習」と対照するため、同様に「技術・人文知識・国際業務」の資格で来日した外国人就労者に対して、同様の調査を行う。その中で、多くの外国人教師の出身国であるオーストラリアに出向き、出国前にどのような組織的・非組織的な支援が提供され、どのように利用されているかを調査する。訪問中に、来日を控えている人を紹介してもらい、来日前のインタビューと来日後の追跡調査を依頼する。 4.英語教師の国外および国内関係者・支援者への調査:研究代表者と研究分担者がオーストラリアに出向き、上記の技能実習生の支援者と同様な調査を行い、事例収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の当初から計画していた中国とベトナム出身の技能実習生への調査が実施できなかったことによる。2022年度、海外への移動が可能になった場合は、オーストラリアでの現地調査のために予算を使用する予定である。
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