研究実績の概要 |
トルコ語における例外アクセント(下がり目あり)については、音節構造と密接な関係がある。トルコ諸語における基本的な音節構造は、V, CV, VC, CVC, VCC, CVCCの6種である。音節末の子音連続については、アルタイ諸語の中で比べると、モンゴル諸語やツングース諸語においては、トルコ諸語に比べて少ない。また、トルコ諸語における子音連続の制約に対する一般性や個別性は、これまで論じられていない。こういった現状をふまえて、トルコ諸語全般の音韻論的音節の概要を捉えるために、無作為に抽出したテキストにおける音節の件数を計測した。 対象は、トルコ諸語に属する 12 言語(トルコ語、アゼルバイジャン語、ガガウズ語、トルクメン語、チュヴァシ語、タタール語、カザフ語、キルギス語、ウズベク語、ウイグル語、トゥバ語、サハ語)とし、それぞれ約 5,000 語の文章を、分野は特定せず、無作為に抜き出した。本研究で分かる範囲での、トルコ諸語の音節に対する共通性は、以下の通りである。 ・音節構造については、トルコ諸語間でそれぞれの言語と音節構造には関連性がない。従って、若干の差はあれども、トルコ諸語間では概ね共通しているものと解釈できる。 ・音節末の2子音連結については、流音 r, l+t, k, s、鼻音 n+ t, k, s, d, cセディーユが連結しやすい傾向にある。摩擦音 s は t と連結しやすく、k, s は件数が少ない。接近音 y についても同様の傾向である。また、r 終わりでは br やtr の件数が多い。 ・音節頭の2子音連結については、無声破裂音 p, k, t+流音 r, l(tl 除く)が子音連結しやすい傾向にある。摩擦音 s, şは t, kと連結しやすい。また、流音が後続する子音連結は、先述したものに加えて gr, fr, vl, dr, sl, xr といったように多種である。
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