研究課題/領域番号 |
20K00585
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
高垣 敏博 神奈川大学, 外国語学部, 非常勤講師 (00140070)
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研究分担者 |
西村 君代 上智大学, 外国語学部, 教授 (10365679)
宮本 正美 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 名誉教授 (20131477)
福嶌 教隆 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 名誉教授 (50102794)
梅崎 かほり 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (30747788)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スペイン語学 / 統語論 / 方言学 / 地理的バリエーション / 言語接触 / 先住民語 / leismo / loismo |
研究実績の概要 |
スペイン語はスペインだけではなくラテンアメリカを包括する広域言語である。20以上の国と地域で5億を越える人々に用いられる言語には当然地域的な変異が生まれる。本研究はスペイン語の「統語的側面」に的をしぼり、現地におけるアンケート調査によってスペイン語圏全体の地域的バリエーションを追究する目的をもつ。具体的には、スペイン語圏の約30都市で文法研究において問題になりやすいテーマを含む110程度の文について現地被験者に判断を求めるもので、2001年以来これまで20年余りの調査結果を集積(https://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~cueda/varigrama/index.html)し、分析・発表を行ってきた。2020年にはスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学から刊行された『スペイン語のデジタル方言学』Dialectologia digital del espanol (Angel Gallego他編)に本研究に関する1章「世界のスペインの文法バリエーション:スペイン語の統語特徴の展望」"Variacion gramatical del espanol en el mundo (VARIGRAMA): una vision panoramica de los rasgos sintacticos del espanol”(代表者高垣および分担者共著)が所収された。 その一方で、このような調査の途上で新たな課題が生まれてきた。スペイン語圏の特定地域における特異な文法的変異である。具体的には南米アンデス山岳地域における「目的語人称代名詞 loおよびleの特徴的ふるまい」で、先住民語の影響を受けていると言われている。本年度はこの「局所的な変異」の実態を検証すべくボリビア、コチャバンバにおいて現地アンケートを実施し、興味深い成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、スペイン語の文法研究で課題となることが多い20程度の主要テーマ(例、叙法、再帰構文、弱形人称代名詞、関係節、人称・数の一致など)に関する使用状況を1つのアンケートにまとめ、現地の大学生を対象に、現地研究者の協力を得て実施することが中心的作業である。信頼できるデータは現地に赴いて実地調査することにより得られる。長年継続してきた本調査では一貫してこの方針を堅持してきた。 本研究初年度から計画していた中米ホンジュラス、ニカラグアにおける現地調査は、現地の治安やコロナ禍の現況に鑑みて、中止せざるをえなかったが、現状でもいまだ不透明である。当該二か国については中米近隣のグアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、パナマなどですでに実施した調査の結果により当面補完せざるをえない。 その一方で、上述の局所的な調査の必要性が顕在化してきた。すなわちエクアドル、ペルー山岳地域、ボリビア、アルゼンチン北部などは先住民語ケチュア語やアイマラ語などとの言語接触地帯で、これらの地域では目的語人称代名詞の lo や le の用法がいわゆる標準的なスペイン語のそれと特徴的に異なること、またそれが先住民語の影響によるものであることも報告されている。本研究では、わが国ではあまり先行研究がないこの問題に取り組むべく、ボリビア、コチャバンバにおいてスペイン語およびケチュア語によるアンケート調査をサンシモン大学の協力を得て実施し、興味深い結果を得ることができ、すでにその概要を研究発表した。バリエーション研究に新たな視点を提供することができれば幸いである。今後は、アンケートをエクアドル、ペルーへと拡張しアンデス独自の局所的バリエーションのモデルを構築したい。
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今後の研究の推進方策 |
1)当初の計画どおり、これまでのアンケート調査を残されたホンジュラス、ニカラグアで実施することがまず第一の課題となる。これには現地の社会状況に依存することになるだろう。 2)アンデスのスペイン語とケチュア語との言語接触が存在する地域-ボリビアの他の都市、エクアドル、ペルー山岳部-でアンケート調査を重ね、実態とバリエーションをより明確化する。本年度はこの目的で、ボリビア社会文化・ケチュア語の専門家(梅崎かほり)を分担者として加えた。 3)次年度は、今回のコチャバンバでの調査の分析および他の二言語使用地域の既存データとの比較などに充てる。さらには言語接触やケチュア語など先住民語に関する先行研究の知見を蓄積し、今後の研究ためのより効果的な方法を探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はR2年~R4年交付で、スペイン語圏における海外現地調査が課題の中心であったが、主としてコロナ禍など社会的要因により予定通り遂行できなかった。幸い本年度環境が整いボリビアにおける現地アンケート調査を無事実施できたが、調査結果の整理や分析などはさらに1年程度の余裕が必要となった。上記の遅延に伴い次年度必要な使用額が生じることになった。
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