研究課題/領域番号 |
20K00587
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
村杉 恵子 (斎藤恵子) 南山大学, 国際教養学部, 教授 (00239518)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生成文法理論 / ミニマリスト理論 / 言語獲得 / 統語構造 / 主節不定詞現象 / ラベリング / Mimetics / パラメター |
研究実績の概要 |
幼児の言語獲得の初期の段階においてMimeticsは主節不定詞としての性質を伴って「マイマイた」(ぐるぐるまわっているという意図をもった発話)や「パイた」(取り除いてほしいという意図をもった発話)として動詞的に使われる。この経験的事実は、幼児が親の語彙を単に模倣して学ぶことによって言語を獲得するのではないことを示しており、自らの知識を用いて、動詞を創造的に生成する力が生得的に備わっているとする仮説の論拠の一端となりうる。またMimeticsが言語獲得初期の文構造において重要な役割を担うことを示唆する。 幼児の生産的なMimeticsを含む語彙の生成の方法は、若者言葉にみられる創造性と性質とも共通する。若者言葉の創造性と規則性については、本科研プロジェクトの前身となる17K02752の科研プロジェクトの成果の上にたち"Innovative Binominal Adjecives in Japanese Food Descriptions and Beyond"という論文として結実した。これはJohn Benjamins 出版社から2022年2月に書籍の一章の共著論文として出版された。また、科研プロジェクトNo. 17K02752の研究を発展させた本プロジェクトの研究内容については、2021年夏にヨーロッパ言語学会において口頭発表を行った。現在は、これまで提示した分析を精緻化し、交際ジャーナルへの投稿をめざしている。 また、2021年度は、新たなCHILDESコーパスを用いた言語獲得研究を進め、草稿としてまとめた。この研究成果については、『コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論3』に2022年度に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍において幼児言語獲得データ収集、研究会出席や国際学会出席の困難な中で、新たなCHILDESコーパスについて、東北大学小川芳樹氏からさらなる補足参考資料を共有させていただき、分析を進めることができた。また、ZOOMシステムを用いて名古屋大学准教授との共同研究を続けており、本研究プロジェクトの前身となる17K02752研究成果を発展させつつある。
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今後の研究の推進方策 |
幼児言語の経験的事実については、現在実験的研究が困難であることから、新たなコーパス(CHILDES, 小川コーパス)分析を進め、さらに検証を進めている。「幼児の言語獲得から生成文法理論へ」とする論文が『コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論3』に出版される予定である。 また、17K02752科研プロジェクトを発展させた研究として、国際ジャーナルへの投稿をめざして、さらに研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会出席や国際ワークショップの開催を行うことを予定していたが、コロナ禍のため、これを延期せざるを得なかった。2022年以降には共同研究、研究成果の公表を行う予定であり、今年度使用できなかった外国旅費が必要となる予定である。
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