イラク・イラン出土の前三千年紀前半~二千年紀後半の未公刊楔形文字資料を研究し、資料の公刊および公刊準備を行った。資料言語は主としてシュメール語であるが、エラム語、アッカド語資料が含まれる。 初期王朝シュメール南部地方の政治、経済状況を知るために重要な資料群、イラクのUmm al-Aqarib資料については、発掘責任者のハイダル・アルマモリ氏の許可のもと、研究分担者前川和也氏(京都大学名誉教授)とともに、週1回文書の解析を行った。これについては第66回シュメール研究会においてその概要を報告した。前川氏と共同で国士舘大学において英語での公刊を準備中である。 イラン国立博物館所蔵アンシャン出土の楔形文字文書の研究については、同博物館の許可のもと、研究分担者前川氏、研究協力者の松島英子氏(法政大学)、共同研究者の春田晴郎教授(東海大学)、川瀬豊子氏(大阪樟蔭女子大学)ほかとともに、研究を継続している。互いの研究内容確認のため、第1回マルヤン文書研究会(2023年8月25-27日)、第2回マルヤン文書研究会(2024年3月15-17日)を京都で開催した。 今年度予定していたイラン・イラクへの渡航、招聘は見送らざるを得なかったが、博物館側に必要箇所尾の写真を撮影・送付してもらうなどで研究に支障が出ないよう対応を行った。 あらたに広島大学でも未公刊粘土板の調査を山口大学教育学部山本孟氏と開始した。同大学の許可のもと、6回の調査を行い、山本氏、上野貴史氏(広島大学文学部)と共著で、その予備調査報告、およびシュメール語1点、アッカド語1点の粘土板資料の翻字・翻訳を提出した。2024年度は、50枚程度のシュメール語未公刊粘土板の公刊を予定している。前三千年紀~二千年紀初頭のイランとイラクの研究・公刊した文献を比較検討し、古代メソポタミア社会の言語交流の一端を示すことができる資料を公開した。
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