研究課題/領域番号 |
20K00591
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研究機関 | 尚絅大学 |
研究代表者 |
山川 仁子 尚絅大学, 現代文化学部, 准教授 (80455196)
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研究分担者 |
天野 成昭 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 教授 (90396119)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | やさしい日本語 / 音声学 / 心理言語学 / 聞き取りやすさ |
研究実績の概要 |
本研究は,音声学・心理言語学の科学的な知見や実験結果に基づく「やさしい日本語」への変換規則を構築し,それを用いた①現行の「難しい日本語」の変換と,②既存の「やさしい日本語」の修正によって,聞き取りやすい「やさしい日本語」の実現を目指す。これが実現すれば,屋外放送・屋内放送・公共放送・車内放送や地方自治体の窓口対応・広報活動などでの外国人への情報提供が円滑になるばかりでなく,外国人児童生徒への日本語教育や日本人高齢者への情報提供等の向上も期待でき,波及効果と社会的意義が大きい。研究目的を達成するため,2020年度は下記4点において研究を進めた。 1.現行の「難しい日本語」の収集:アンケート調査・面接調査により,自治体の避難情報,広報資料,観光案内等で実際に使用されている単語や文を収集した。各自治体・施設に協力を依頼して防災放送の原稿を入手し,文字データに変換した。 2.既存の「やさしい日本語」の収集:先行研究,書籍,マニュアル等から,既存の「やさしい日本語」の単語・文を収集した。 3.単語・文の抽出・解析: 上記1,2で収集したデータについて形態素解析および構文解析などを行い,現行の「難しい日本語」および既存の「やさしい日本語」の語彙・語順・文構造の特定を行った。 4. 聞き取りやすい「やさしい日本語」への修正・変換:聴取困難度が高い音素を含む単語の特定,および,単語親密度データベースを用いた単語親密度の低い単語の特定を行った。研究結果をIntaernational Congress of Psychology (ICP2020+)に投稿し,採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に挙げていた内容はおおむね実施できた。当初,2020年度の実施計画に挙げていた「背景雑音の強度および反響時間の音響計測」はコロナ禍のため実施できなかったが,2021年度に実施を計画していた,聞き取りやすい「やさしい日本語」への修正・変換(聴取困難度,単語親密度の分析)を前倒しして実施した。以上のことから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に従い,2021年度は下記を実施する。 1.聞き取りやすい「やさしい日本語」への修正・変換(継続):聴取困難度が高い音素を含む単語の特定,および,単語親密度データベースを用いた単語親密度の低い単語の特定を引き続き実施する。構文解析で得た文構造を基に,心理言語学および語用論の観点から難解な文構造や語順を持つ文を特定する。これらの単語・文について,音素の聴取困難度の低下と単語親密度の上昇および文構造・語順の簡易化が生じるように変換規則を構築し,その規則に基づいて聞き取りやすい「やさしい日本語」への変換と修正を行う。 3. 背景雑音の強度や反響時間の音響計測:前年度実施できなかった背景雑音の強度および反響時間の音響計測を実施する。実施が困難な場合は,雑音・反響データベースの利用を検討する。 4. 実験室での聴取実験: 変換・修正した単語・文の聞き取りやすさ・理解しやすさを測定するために,3で測定した背景雑音や反響時間を単語・文に付加し,それを外国人と日本人の参加者に聞き取らせる聴取実験を行う。聞き取りの回答から各単語の認識率と各文の理解率を算出し,認識率・理解率が低い単語・文を上記1の過程へフィードバックすることにより,「やさしい日本語」への変換規則を修正する。対面による聴取実験の実施が困難な場合は,オンラインでの実施も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナ禍が拡大・継続したため,当初予定していた対面による研究打ち合わせ・面接調査・データ入力アルバイトの実施を縮小し,これらに割り当てた助成金の一部を次年度に繰り越すこととした。 (使用計画) 繰り越した助成金は,2021年度に実施予定の聴取実験やオンライン面接用の機器の購入等に充てる。また,現地での音響計測が難しい場合は,雑音・反響データベース等の購入に充てる。
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