研究課題/領域番号 |
20K00600
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
益子 幸江 東京外国語大学, その他部局, 名誉教授 (00212209)
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研究分担者 |
峰岸 真琴 東京外国語大学, その他部局, 名誉教授 (20183965)
鈴木 玲子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40282777)
降幡 正志 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (40323729)
佐藤 大和 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (50401550)
岡野 賢二 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60376829)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 声調言語 / リズム / イントネーション / 音節 / 語 |
研究実績の概要 |
本研究は、言葉のリズムの形成に関与する諸特徴を解明することが目的である。その中で特に声調言語と非声調言語を取り上げている。 声調言語(タイ語、ラオ語、ビルマ語)については、リズムの単位となる「音節」の種類の一覧、そして、基本的には音節より上位ではあるが音節の単位と重なる部分がある「語」の単位の一覧(1音節で1語として意味を持つものが多いので、2音節語、3音節語が複合語であるか否かの判断が必要。)、語の内部の音節構造(2音節語以上で)の一覧を作成した。これは3つの言語のそれぞれの事情があり、ラオ語についてはほぼ完成しているが、タイ語、ビルマ語については「語」の単位の確認の途中である。 非声調言語(日本語、インドネシア語)については、「音節」の種類については声調言語より単純ではあるが、「語」の単位は声調言語と事情が異なる。日本語では、1語にひとつのアクセント型が付くので、この特徴で特定した単位を「語」として、「音節」より上位の単位とすることにしたが、アクセント型は2語以上が複合して形成された複合語でも、ひとつのアクセント型がつくので、複合語の中の語構成も観察対象とすることになる。一方、インドネシア語は高低アクセントだけでなく強弱アクセントも無い、という説もあるので、語ないし句の切れ目を示す音声的特徴に注目し、それによって、語の内部、句の内部のリズムがどのように刻まれるのかを観察する。語ないし句の切れ目を示す音声的特徴としては音調の可能性が大きく、この音調のパタンはほぼ特定できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
声調言語と非声調言語とで、作業が大きく異なり、また、それぞれの中で、言語ごとにその事情や判断の難しさがあり、進捗状況が異なっているが、それぞれ、おおむね順調である。以下にそれぞれの状況を述べる。 声調言語のタイ語については、頻度順の5000語のリストが入手できたので、それに基づき、上位500語の音節の形の一覧を作成した。それらについては出現する位置(すなわち第1音節、第2音節、最終音節など)による頻度も調査している。 ラオ語については、基礎語彙について、その音節の形を一覧する方法を取った。基礎語彙については、言語調査で使用される500語の基礎語彙表を利用した。各語について、ラオ語での形と、その語の音節の形を記述し、一覧表を完成させた。これに基づいて、語のレベルでのリズムの単位について検討を行うことができる段階である。 ビルマ語については、タイ語、ラオ語とは異なる。音節の形はこの3言語の中では比較的単純である可能性があるが、語の形としてはやや複雑である可能性がある。現在、語およびその音節の種類の一覧表を作成している。 非声調言語の日本語では、アクセント型でひとまとまりが示されると考えられるので、これらの音調パタンを記述している。これらが句の形成、発話の形成にあたり、どのようにリズムに関与するかを観察する。一方、インドネシア語は、語ないし句の切れ目を示す音声的特徴に注目し、それによって、語の内部、句の内部のリズムがどのように刻まれるのかを観察する。語ないし句の切れ目を示す音声的特徴としては音調の可能性が大きく、この音調のパタンはほぼ特定できている。
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今後の研究の推進方策 |
声調言語(タイ語、ラオ語、ビルマ語)については、それぞれの一覧を完成させ、リズム形成に関与的な特徴として、音節の形が果たしている役割を観察する。また、語(および複合語)、句(句の内部構造、句の間のつながり)という上位の文法レベルでの要素も含めて検討する。その際、声調言語それぞれの声調が果たす役割も併せて観察し、これがイントネーションとして現れる形を観察する。さらに、イントネーションの現れた形が、逆にリズムの知覚に関与的である可能性を検討する。すなわち、音の高低変化、音の高低の不変動がリズムの知覚において単位の長短の感覚に関与するかどうかを検討する。 非声調言語(日本語、インドネシア語)については、音調のパタンの方から語、句、などのひとまとまりを特定していることになっているので、それぞれの内部構造を観察する作業が必須となる。語に接辞を含む場合や句の内部での文法的関係などの情報を含めて、音節の形を観察し、リズムとのかかわりの検討を進める。日本語とインドネシア語とでは、高低アクセント言語である日本語と、少なくとも非高低アクセントであるインドネシア語との対照がどのレベルまで可能であるか、検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の中、人の移動が制限されていたため、旅費が全く使用できなかったことによる。旅費の使用目的は、学会発表およびえ資料収集であった。学会や研究会については、オンライン開催によるものが多かったので、成果発表の場はある程度確保されていた。 今年度は移動制限緩和が段階的に行われることが期待されるので、その中で旅費の使用が可能になると予想している。
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