本研究課題の「自然言語の階層構造の変異可能性に関する研究」は、昨年度から経験的な事実の発掘を中心にして、理論的考察を発展させることを目標に研究を進行させた。本年度は、最終年度に当たり、これまでの研究の成果のとりまとめを行うことを中心に、最終的な研究結果の公表に向けて作業を行った。今年度の成果としては、対面の講演会での研究発表をいくつか行うことができたことが挙げられる。その中には、ハンガリーのデブレツェンの国際学会での複合動詞構文の意味的制約に関する発表、フランスパリのINALCO及びイギリスオックスフォード大学でのレクチャーにおける軽動詞構文に関する研究発表、フランスパリのINALCOでの脱使役化動詞のレクチャーが含まれる。その他、国内においても、北海道大学での軽動詞構文の発表、南山大学の語論・意味論・言語獲得論ワークショップの日本語統語構造の構成に関する発表、神戸大学のLinguistic Symposiumにおける心理副詞の分析の研究発表など、かなり活発に活動することができた。論文については、軽動詞構文の一種である「青い目をしている」構文に関する新たな視点からの分析をした論文を発表、また、複雑述語形成に関わる隣接性の条件に関してDM理論に基づく分析をした論文が開拓社より出版された論文集に収録された。書籍に関しては、共編のPolarity-Sensitive Expressions: Comparisons between Japanese and Other LanguagesがドイツのDe Gruyter Mouton社から 出版され、極性表現と統語構造を扱った論文が収録されている。最終年度にあたる本年度は、当初の予想以上の研究成果の発表をすることができたと考えている。
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