研究課題/領域番号 |
20K00609
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
伊集院 睦雄 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00250192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 漢字 / 音読 / 拍数効果 / 言語普遍性 / 読みのモデル |
研究実績の概要 |
本研究は,他言語の「読み」の過程で認められているシラブル数効果(同じ文字数を持つ語でもシラブル数が長ければパフォーマンスが悪くなる)が日本語でも認められるかを音読課題により検証し,この日本語における拍数効果が,言語処理過程のどのレベルで発現しているのかを文字判断課題,カテゴリー判断課題,絵の命名課題を用いて検討することを目的とする.初年度である令和2年度は,日本語の音読における拍数効果を検討するため,拍数を操作した漢字一文字語の音読課題の予備実験を実施した.拍数と読みやすさ(出現頻度と心像性を利用)を操作した刺激語(拍数3条件(1拍,2拍,3拍)および読みやすさ2条件(易読,難読))を用いた結果,難読条件において音読潜時に拍数効果が現れ,1,2拍条件に比べて3拍条件で長くなる傾向が認められた. これまで,漢字一文字の音読における拍数の効果は認められてこなかった(玉岡(2005);御領(1987)).ただし,従来の研究では出現頻度や心像性値の比較的高い「読みやすい」漢字刺激が使用されており,出現頻度や心像性といった強い効果を持つ変数の陰に,弱い拍数効果が隠れてしまい,行動データとして検出できなかった可能性がある.本結果は,出現頻度や心像性値の低い「読みにくい」刺激語を用いれば,拍数効果を検出できる可能性のあることを示唆している.ただし,本結果における拍数効果は,統計的には有意傾向であったため,刺激条件や刺激語を再検討し,改めて実験を実施する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大により,実験室における対面での実験実施に制限がかかることとなった.その結果,拍数を操作した漢字一文字語の音読課題の予備実験までは実施することはできたが,刺激語を再検討した上で刺激条件を絞り込んだ本実験を行うことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,今後,上記の音読実験の他に,文字判断課題,カテゴリー判断課題,絵の命名課題を用いた実験を予定している.実験室実験が実施できない状況下においては,これらの課題における刺激の選択と実験装置の作成を先に行い,対面での実験が可能になり次第,順次課題を実施しデータを収集していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】で述べたとおり,新型コロナウィルスの感染拡大により,実験室における対面での実験実施に制限がかかり,予定していた本実験が実施できなかったため,刺激提示・反応時間測定のためのコンピュータおよびディスプレイ装置の購入を見送った.また,同様の理由により,予定していた研究協力者への謝金と実験補助者への人件費も使われなかった.次年度以降に対面での実験が可能になり次第,順次これらの予算を執行していく.
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