研究課題/領域番号 |
20K00617
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石部 尚登 日本大学, 理工学部, 准教授 (70579127)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語要件 / 移民政策 / 言語政策 / ベルギー / 市民化政策 / 言語統合 |
研究実績の概要 |
2021年度は、前年度に引き続き、ヨーロッパ各国の移民(統合)政策に関する文献および公的情報の収集、分析を行い、それぞれの国で実施されている移民政策において、言語を入国、居住、永住、帰化等の要件とする政策についての最新情報の確認を行った。これにより、前年度に確認していた共通の政策トレンドをより精緻にまとめることができた。とりわけ同年に公開された移民統合政策の国際比較調査「移民統合政策指数(MIPEX)」の2020年度版報告書、およびOECDによる「移民統合指標」を用いた調査の2018年度版報告書の分析を通して、そうした傾向を裏付けることもできた。 以上のようなヨーロッパに共通してみられる政策トレンドの確認と並行し、前年度後半より実施していたベルギーの各連邦構成体およびブリュッセルの3委員会(「フラーンデレン共同体委員会」「フランス語共同体委員会」「合同共同体委員会」)によるそれぞれの移民政策における言語要件の利用について文献調査を継続した。それにより、オランダの政策の影響を受けてフラーンデレン共同体が先行する形で、それ以外の政策主体でも同様の政策が導入され、そのことがまたフラーンデレン共同体の政策に影響を及ぼすという、言語面での移民(統合)政策の強化・厳格化のメカニズムを明らかにすることができた。こうした経年的な政策の変遷と国内における影響関係についての成果は、2021年10月16日に多言語社会研究会第87回研究会例会で発表した。 また、そうした国内での影響に取り込まれる形で、共同体の設立以降これまで独自の言語政策を実施してこなかったドイツ語話者共同体において、言語にまつわるはじめての政策が実施されたことも明らかになった。この点については、隣国ドイツの政策との影響関係も含め、2022年度に関連研究会での発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度と同様、本年度もベルギーでの現地調査が物理的に不可能であったため、現地調査を前提としていた当初の計画から遅れが生じている。特に文献調査とともに本研究のもうひとつの調査の柱として予定していた「法律で規定された政策が現場で実際にどの程度実践され、どのような成果をあげているのか(あるいはいないのか)について確認する」こと、および移民関連施設への訪問調査や各共同体において実際に政策を受ける側の移民への聞き取り調査は一切実施できていない。 また、2020年から続く長期にわたる住民の移動を否応なく制限せざるを得ないという状況(現在でもコロナ以前の水準には戻っていない)が、移民に対する言語政策になにかしらの影響を及ぼしているのか否かという新しい課題も昨年度から継続して持ち上がっているが、この点についても未だ分析の着手に至っていない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度前半には、当初の計画に従い、ベルギー国内の政策主体間の影響関係とヨーロッパに共通の政策トレンドとの影響関係についての考察を行う。 また、これまで実施できていない現地調査は、状況が許せば、次年度夏および年明けに実施することを予定している。その調査結果をもって本研究の最終的な結論をまとめる。 なお、次年度後半に現地調査が状況的に不可能となった場合に備え、また次年度が本研究課題の最終年度であることを踏まえて、以下の二点をもって代替的な成果を出すことも予備的に計画している。ひとつは、移民関連施設への訪問等を中止し、より政策的側面を重視した研究へ変更することである。移民(統合)政策の受容者側の視点という本研究の強みを失うことにはなるが、それでもベルギー国内の複数の政策主体による複数の移民(統合)政策、それらの影響関係、さらにはヨーロッパの共通の政策トレンドとの関連についてある程度の成果を示すことができると考える。もうひとつは、現地調査に変えて新聞や雑誌等のメディア情報の大規模テクストを利用した調査を行うことである。情報収集や整形、電子化といったテクストの構築は本年度より進めている。これにより、ある程度は各共同体で言語要件が政策的に導入、実施された背景を把握することができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定した現地調査が新型コロナウィルスの影響により実施できなかったために次年度使用が生じた。 次年度交付額と合わせて、次年度後半にまとめて現地調査(9月および2月の2回)を実施することを予定している。
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