研究課題/領域番号 |
20K00621
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
高垣 由美 関西学院大学, 文学部, 教授 (60253126)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フランス語 / 総称 / 裸の名詞 / 無冠詞 / 補語 / 名詞修飾 / 結束性 / テクスト |
研究実績の概要 |
これまでに研究してきた裸名詞と総称文についての知見に基づき、令和5年度はその発展として、名詞修飾表現全般に研究対象を広げ、テクスト構成に関する日仏対照研究へ進むべく考察を深めた。 名詞修飾表現の中でも、特に同格の意味を持つ名詞修飾節の内容とその被修飾名詞に関わる様々な制限に着目し、日本語とフランス語の名詞句構造の違いを考えた。同格的名詞修飾表現に関しては、先行研究が豊富な日本語の現象からヒントを得て、類型論的観点からの先行研究が少ないフランス語の現象を調べた。フランス語では、同格的名詞節の導入表現の代表的な形としてque/ou/comme quoi/selon lequelの4つが存在する。この4種類の導入表現の使い分け、導かれる名詞節の性質の違いを、大規模コーパスを使用して集めたデータを元に明らかにした。語彙的、統語的、意味的、語用論的な観点から考察した結果明らかになったのは、これら4つの導入表現によって導かれる同格的名詞修飾表現にはそれぞれかなり異なった性質があり、特に導入表現が単純形(queとou)か複合形(comme quoiとselon lequel)で成立条件が大きく異なるということ、すなわち、単純形では統語的意味的制約が大きく、複合形では語用論的要因が大きく関わるということである。 このような4種類の同格的名詞節の間の違いは、フランス語を母語としない学習者にとって理解が難しい。その微妙な違いを明らかにすることは、日本語を母語とするフランス語学習者への教育的効果が見込める。そこで、これらの表現の用法の違いを学習者にいかに説明するかという点についても考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の個人レベルの研究そのものは順調に進み、当初予定していた裸名詞と総称文については、それぞれ単著論文を執筆し、令和2年と令和4年に国際学会(7e et 8e Congres Mondiaux de Linguistique Francaise 第7回及び第8回のフランス語学世界大会)で発表、同学会のジャーナルで論文を公開した。これは当初の計画通りである。 令和5年度は、裸名詞と総称文についての研究をさらに発展させ、テクストの結束性に大きな影響を及ぼす名詞修飾表現一般についても、考察を広げることができた。その一端として、フランス語で同格を表す名詞修飾表現について、研究成果を論文の形でまとめた。この論文の内容については、令和6年度に国際学会(9e Congres Mondial de Linguistique Francaise第9回フランス語学世界大会)で成果発表を行い、同学会のジャーナルに掲載されることが確定している。 その一方で、現在までの進捗状況を「やや遅れている」と報告せざるをえないのは、研究成果の一般公開という点で、予定の大きな変更を強いられ、いまだにその一部が実現できていないからである。新型コロナウイルス禍のために、2回予定していた国際研究集会が開催できていないのである。このように計画通りに進まなかった最大の原因は、来日を承諾していた海外の研究協力者が、新型コロナウイルス禍のために当初の計画に不都合が生じ、来日ができなくなったからという点が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス禍の影響でこれまで開催できていない国際研究集会は、その規模をやや縮小して令和6年の10月に開催する。国際共同研究の成果の一端を発表し、国内外から研究協力者を招聘して、国際的研究交流を進める予定である。 また、本研究のまとめとしての名詞修飾表現に関する研究については、令和6年7月にスイス国ローザンヌ大学で開催される学会で口頭発表を行う。この発表の元となった論文は、ジャーナルでの掲載が決定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外から研究協力者を招いて研究集会を行う予定であったが、新型コロナウイルス禍の影響のために研究計画が大幅に変更となった。毎年開催の可能性を真剣に検討したが、開催予定年度が変わると、当初来日を承諾していた海外の研究者の都合も変わって来日が困難となり、結局これまで一度も開催できなかった。そこで研究の最終年度となる次年度10月に、これまで開催できなかった国際研究集会を開催する。次年度の研究費の使用は、この研究集会開催関連の費用が主なものとなる。即ち、国内外の研究者を招聘し、研究成果の発表と国内の研究者との交流を行う予定である。
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