研究課題/領域番号 |
20K00624
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
金田 章宏 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 名誉教授 (70214476)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 宮古語 / 大神島方言 / 文法記述 / 語彙集 / 形態論 |
研究実績の概要 |
2021年度は本科研による6回の現地調査を含めて、9回の現地調査を行った。その結果、宮古語の他方言にみられない文法的特徴がまたいくつか確認された。そのうちのいくつかは宮古語のほかの方言にもみられるものだが、大神方言ではより広い意味用法を持っており、それらをどこよりも詳細に記述することができた。あらためて大神方言を記述する重要性を認識している。 語彙集は昨年度の3千語から3千5百語ほどまで増やすことができた。また、これまで調査して文字化していた資料と録音とを文単位で切り取って関連付ける作業を継続して行い、前年度の約2千文から4千文以上増やして、合計約6千7百余文を作成することができた。さらに、現地話者による単語や文の発話の動画はこれまでに2百以上記録済みである。まだ十分な数とはいえないが、これにより、音声に大きな特徴のある大神方言を視覚的にも捉えることができるようになっている。 発表論文としては、「宮古語大神方言 形容詞語幹の用法―文における重複語幹の機能を中心に―」で形容詞語幹重複形の文における機能を詳細に記述し、その全体像を明らかにした。研究発表では、「大神方言の複数性にかかわる助辞na:について」で当該助辞のきわめて興味深いふるまいを詳細に記述した。また「宮古語大神方言の局面表現にかかわる諸形式」では<局面>を広くとらえて、それにかかわるさまざまな形式の意味機能を明らかにした。「宮古語大神方言の敬語法」ではこれまで宮古語では記述の少なかった敬語表現について詳細に記述した。これらにより、目指す文法書全体のパーツが着実に揃いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現地調査を予定通り実施できたことで、文法記述に必要な情報をきわめて順調に得ることができた。また、語彙集については、科研期間内に4千語程度を目指す予定だったが、初年度ですでに約3千語を収集することができており、今年度はさらに5百語程度を追加し、計約3千5百語を収集することができた。この点でも当初の予定よりも大きく進んでいる。文字・音声データの切り分け作業も約6千7百余文を作成することができていて、早いペースで進んでいる。また、2022年度に研究会等で発表する材料もそろえることができている(5月に1件発表済)。 なお、語彙集の暫定版については、本科研以外の外部資金によって2023年度内に作成を見込んでいるが、本科研では期間内にさらに語彙数増やしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本科研は基本的に蓄積の作業である。文法記述はより詳細なものに蓄積していき、語彙集も語彙数と意味内容の記述を蓄積していく。例文の用例数にしても同様である。 文法記述を進めるにつれて、過去の調査の不十分な点も明らかになってくるので、それらのより詳細な項目の補充調査をつねに繰り返しながら、より詳細な文法記述を行なう。 語彙集については今年度中に当初予定の4千語を達成したい。例文の文字データと音声データの結合をすでに6千7百以上作成しているが、今年度中に1万例を目指す。また、発話の動画は現在2百程度なので、これも3百以上を目指す。 本科研で調査対象としている話者は今年9月で満97歳になるが、きわめて良好な関係の中で調査ができている。しかし、時間的な問題はますます厳しくなっているので、より集中して調査を進めたい。
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