研究課題/領域番号 |
20K00635
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
陳 力衛 成城大学, 経済学部, 教授 (60269470)
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研究分担者 |
木村 一 東洋大学, 文学部, 教授 (90318303)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蘭学 / ドゥーフ・ハルマ / ローマ字本 / 蘭和辞書 / ホフマン / シーボルト / フィッセル / メドハースト |
研究実績の概要 |
「出島からバタビヤへの日本知の伝播―蘭和辞書をめぐるメドハーストとフィッセルとの交流―」(陳力衛,「成城大学経済研究」239)と「『ドゥーフ・ハルマ』のもう一つの流れ―フィッセルのローマ字本の位置づけ―」(陳力衛,「国語と国文学」100-1)の2編の論文は本研究に直結した内容である。前者はバタビヤのイギリス人宣教師W. H. メドハーストがいかに蘭和辞書(「フィッセル本」)を自分の『英和和英語彙』に活用したのか,またバタビヤを中継地点として中国との知的交流も行われていることを整理したものである。後者は,「フィッセル本」が前後するローマ字で記された蘭和辞書の中でのいかなる位置にあるのかを実証的に明らかにしたものである。日本,オランダ,イギリス,中国といった国々との交流から,ローマ字で記された「長崎ハルマ」が諸言語の対訳辞書として展開していくことを検証したものでもある。 「『学問のすすめ』の文体」(陳力衛,「福澤手帖」192),「辞書における挿絵の展開―一九世紀の英和辞書,国語辞書,和英辞書を資料として―」(木村一,『近代語研究』23),「国語辞書の項目中の挿絵-明治期と現代における-」(木村一,「文学・語学」234)の3編の論文は,近代日本語という観点から本研究を補完し,一次資料を最大限に活用して調査・考察を行ったものである。 継続して「フィッセル本」のデータベース化を進めている。現状でも,使用に問題がなく,さまざまな蘭和辞書との比較照合が可能となっているため,より精密な考察が行える。 これらの研究実績をもとにさらに「長崎ハルマ」ローマ字本の実態に迫ることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文として本研究に関連するものを複数公表することができた。特に本研究の中心をなす蘭和辞書「フィッセル本」に関しての論文を公表できたことはきわめて意義があることである。その一例として,ローマ字本の展開について先行研究では明らかにされていない点をメドハーストの書簡などをもとに解明している。継続して,グローバルな展開に留意しながら,日本語の広がりについても調査・考察を行っていきたい。あわせて,「フィッセル本」以外のローマ字本における調査が必須である。 「フィッセル本」のデータベースの作成も継続して行っている。現状よりも精度を高めることで,より多様な検索を行えるものとしたい。 また,2023年度に,本研究に関連する論文の掲載が決定している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う補助事業期間再延長承認申請書を提出し,2023年度まで研究の継続が可能となった。3年間にわたり行えなかった実地での調査を可能な範囲で進めることとしたい。 また,継続して「フィッセル本」を軸に,海外で作成された諸種の「長崎ハルマ」ローマ字本の日本語学的な調査を行うことで,当時の日本語の実態が解明できるものと考えられる。欧州における対訳辞書としての展開と役割を視野に入れ,日本語学習のための改変などを考察したいと考えている。あわせて,調査結果をもとに諸種のローマ字本の相互の関係について検証を行うこととする。また,引き続き日本語のローマ字表記がどのように継承されていったのかについても調査を行う。 その上で,発表や論文などを通して研究成果の公表を行うこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4(2022)年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)新型コロナウイルス感染症の影響に伴う補助事業期間再延長承認申請を行い,次年度も継続して研究を行うため。
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