研究課題/領域番号 |
20K00641
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田川 拓海 筑波大学, 人文社会系, 助教 (20634447)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 外来語 / 語種・語彙層 / 借用 / 分散形態論 / 日本語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,現代日本語(共通語)や方言を対象とし分散形態論 (Distributed Morphology)という理論を用いて語彙に特有の情報とその位置付けを適切に捉えられるモデルを構築することである。2020年度は『日本語と日本文学』(筑波大学日本語日本文学会)66号に掲載された研究論文「外来語の形態論研究 : 外来語系接辞と新語形成」においてこれまでケーススタディが多かった外来語系の接辞の認定基準について検討し,また具体的にどのような形態が該当する可能性があるかということについて接頭辞,接尾辞ともに具体例を挙げ記述した。また,外来語系の新語である「タピる」が一般的に考えられているより広い意味を持ち,能動態と受動態で表せる意味に違いが出るという特徴を持つことを指摘した。同号に掲載の巻頭言「借用と外来語と社会」では新型コロナウイルス感染症に関連する多くの外来語がすでに使用されていることを取り上げ,外来語及び借用の研究が持つ社会とのつながりについて現代の視点から簡単に整理した。論文集『言語研究の楽しさと楽しみ 伊藤たかね先生退職記念論集』に掲載された研究論文「分散形態論と語彙層を越えた異形態としての接辞」では分散形態論において語彙の情報がどのように取り扱われるかという課題に直接取り組み,それぞれの語種の情報を素性として取り扱うことで和語系と漢語系の両方の具現の可能性のある接頭辞の分布や振る舞いが分析できることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で扱うデータはテキスト,文字資料から採取するものが多く,たとえばフィールドワーク・インタビューを行う研究と比べて新型コロナウイルス感染症の直接的な影響は大きくないが,2020年度は所属組織である大学における新型コロナウイルス感染症対応関連の業務の量が多大であり,従来も少なかった研究活動に割ける時間そのものがさらに減少してしまった。外来語を対象にした記述的な研究,分散形態論において語種の情報をどのように取り扱うかという理論的な研究いずれにおいても,本プロジェクトのベースになっている過去の研究から継続されている部分については進展がありある程度研究としてまとめることができたが,次の段階の研究に進むために重要となる外来語・借用に関する新しいデータの収集とデータベースの構築・整理についてはあまり進めることができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
個別の外来語・借用に対する記述的な研究,分散形態論を用いた理論的な研究についてはある程度計画的に進めることができているが,データの収集とデータベースの構築に遅れが生じているため,2021年度はデータの収集と整理を集中的に進める予定である。また,本研究の背景として外来語が日常的によく使用されている語彙であるにも関わらず和語・漢語に比べて研究が進んでいないことがあるが,研究としての社会への接続・貢献という点を考慮して新型コロナウイルス感染症に関連した文脈における外来語・借用の実態についてもデータを収集する計画も立てている。これは本研究の大きな変更というわけではなく,SNSなどのwebからも多くデータを集めるという本研究の手法を用いれば新型コロナウイルス感染症に関する表現も多く集まるのは現在の状況から当然予測されることである。これにより,新たな外来語・借用が発生する際にどういうことが起こるのかということに対する側面からも研究を強化することができる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は研究に必要な図書が分散形態論をはじめとした理論的な研究に関するもの,日本語に限らず外来語・借用に関する研究全般,自然言語処理分野も含めwebからのデータ収集に関するものと非常に多岐に渡るため初年度も当初の見込みを超える量が必要となり,次年度もその可能性が高いと考えられる。そのため次年度使用額は図書の購入費に充てる。
|