本研究の目的は、歴史社会語用論の主要なテーマの一つである語用論的標識の発達について、漢語に焦点をあてて考察することである。これまでの研究成果に加え、最終年度である2022年度は、以下のような研究実績を上げることができた。 (1)共同研究者らの編集による国際共同論文集の企画が出版社により受諾され、初稿執筆、内部査読、第二稿執筆を経て、現在、外部査読の段階にある。これは、中国・韓国・日本語の漢語由来の語用論的標識、具体的には、「結果」「勿論・当然」「到底・大体」についての論文集であり、本研究は、日本語における「結果」「勿論」「大体」についての論文を担当している。コロナ下ではあったが、共同研究者間でメールやオンライン会議によって綿密に連絡を取り合い、ここまで進行できたのは大きな成果であると考える。 (2)2023年7月の国際語用論学会において、語用論的標識の歴史をめぐるパネルを共同研究者らとともに企画・提案し、採択となり、その準備に取り組んでいる。本研究は、日本語における「瞬間」「真に」の発表を担当している。 (3)論文「漢語『正直』の機能・用法の拡張」を執筆し、ナロック・ハイコ、青木博史編『ひつじ研究叢書(言語編)第196巻 日本語と近隣言語における文法化』に掲載が決定された。2023年刊行予定であり、現在、校正の段階に入っている。 (4)語用論的標識は配慮表現と深く関わる。本研究では、「レル敬語」や依頼の新しい表現について調査を進め、日本語教育とも関連させつつ、論文として発表した。
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