研究課題/領域番号 |
20K00663
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大森 文子 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 教授 (70213866)
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研究分担者 |
渡辺 秀樹 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (30191787)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Shakespeare / Sonnets / メタファー / 時間認識 / 擬人化 / 繰り返し / 列挙 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
2022年度はShakespeareの作品を研究対象とした。3月に刊行した論文では「時のメタファー」をテーマとし、As You Like It とSonnetsに描かれた〈時〉と人との関わりを表す比喩表現を観察し、従来の認知メタファー論の見解では捉えきれていないShakespeare独特の時間認識およびその認識を構成するメタファーの構造について考察した。Shakespeareが〈時の翁〉という文化モデルをどのように扱っているかに注目し、Sonnetsに表された〈時〉のメタファーが、人間にとって理不尽で無慈悲で手に負えない存在としての〈時〉の性質とともに、〈時〉の不可逆性をも反映するものであることを論じた。また、Sonnets全154編中、特に美しい青年への愛を描いた1番から126番までの詩群を対象にした論文では、〈時〉との関わりの中での詩人の青年に対する認識のしかたと愛情について、人間を〈植物〉として理解するメタファーの観点から考察し、詩に明示されない隠されたレトリックを考察した。研究分担者は、Shakespeareと同時代の詞華集に見られるtimeの形容辞に着目しながら、Shakespeareの詩と戯曲における擬人化された〈時〉の複数のイメージおよび〈時〉への呼びかけに見られるメタファーについて考察した。また、Hamletにおける動物名のメタファーに着目した論文では、動物名のメタファー義を考察、指摘した数あるHamlet研究書や校訂テクストにおいて言及の抜けている動物名について指摘し、本作品中の動物名の繰り返しと列挙の意味、および日本語への翻訳によって失われるメタファー義の問題について、多数の日本語訳作品を比較することにより論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も、昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染状況が改善されず、英詩に関する資料収集や、メタファーデータ収集・分析の方法論について討議するための他大学訪問等、予定していた国内出張ができなかった。研究分担者が予定していた資料収集のための英国図書館への海外出張もできなかった。また、対面形式と遠隔形式の両方を取り入れた授業実施に要するエフォートが大きかったことに加え、今年度は研究代表者が所属する部局の改組の影響もあり、学内運営業務に多大な時間を費やすことになった。研究分担者は、所属大学が移ったことにより、研究環境の移転と新環境の整備、新たな勤務先で課せられた運営業務の遂行等で、研究に充てるべき時間と労力が大幅にそがれた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も、引き続きShakespeareの詩作品を中心に、現代にいたるまで射程を広く取り、さまざまな詩作品を対象として、メタファー成立の背景となる認知メカニズムの解明に向けて考察を深める予定である。2023年4月現在では、新型コロナウイルスの感染状況は昨年度より若干改善され、授業は基本的に対面形式で実施できることとなったが、今後の感染状況については予断を許さず、新たな感染拡大の可能性も指摘されているため、出張を伴う研究活動については引き続き慎重にならざるを得ない。特に、研究分担者が予定している英国での研究資料収集活動は、新型コロナウイルスの影響のみならず、勤務先移転に伴う業務スケジュールの大幅変更により、計画が立てにくい状況になっているが、できる限り工夫して研究を遂行するよう努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウイルス感染状況に改善が見られず、資料収集や研究方法論の討議のための他大学訪問等、予定していた国内出張および海外出張ができなかった。また、対面形式と遠隔形式の両方を取り入れた教育業務に要するエフォートの増大に加え、研究代表者所属部局の改組や研究分担者の異動の影響もあり、学内運営業務にも多大な時間を費やすことになり、研究に充てるべき時間と労力が大幅にそがれた。次年度には、感染状況が好転した時に、研究資料収集のための国内出張(国立国会図書館など)を実施する予定である。また、研究分担者は継続中の動物名称の比喩義の研究の資料収集のため、海外出張(英国図書館)を計画している。
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