研究課題/領域番号 |
20K00668
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
村尾 治彦 熊本県立大学, 文学部, 教授 (50263992)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 構文ネットワーク / 日英比較 / 認知文法 / 2つのnatural path |
研究実績の概要 |
本研究はLangacker (1991, 2008)の行為連鎖と自律・依存の階層化という2つのモデルに基づく日英語の好まれるnatural pathの違いから、多様な自他動詞構文や動詞・名詞構文における構文ネットワーク上での活性度の違いを考察するものである。 今回は購入した認知文法と構文文法の最近の動向を解説した図書、認知言語学的観点からの日英語比較研究の図書、談話機能言語学の図書から、本課題に関わる理論および言語現象の情報を収集した。その他、Langackerの認知文法の論文(Langakcer 2010)などから認知文法理論の考え方の整理をした。これらの情報から認知文法による談話分析を本研究に活かせる可能性の検討も行った。 また、村尾(2018a, b)で、日本語の自動詞志向に一見反するように見える特殊な他動詞文(「私たちは、空襲で家財道具を焼いた」(天野 2002: 117)など)を自動詞志向的natural pathから捉えたが、これに似た英語の他動詞構文(a. My guitar broke a string. b. The stove has blown a fuse. (Taylor 2003:239))が自動詞志向であり、英語の他動詞志向的natural pathに基づく構文の反例となるのかどうか検討した。表面上は上記のような日本語の他動詞構文に似ているが本質は英語に好まれるnatural pathを基盤にした他動詞志向的である可能性について検討した。 さらに、英語の名詞志向、日本語の動詞志向に関して、日本語では対応する構文は動詞表現になると考えられるrecursive+NP, repeated +NP, increased+NPなどの繰り返しを表す英語の名詞句表現の例を採集し始め、2つのnatural pathに基づく分析を開始できる準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は村尾(2018a,b)で扱っていない多様な自他動詞構文を日英語に好まれる2つのnatural pathの観点から説明できるか分析を進める予定であったが、分析に使う認知文法理論の最近の動向に関する情報収集や英語の一部の他動詞構文(a. My guitar broke a string. b. The stove has blown a fuse. (Taylor 2003:239))について英語に好まれるnatural pathを基盤にした他動詞志向的である可能性の検討にとどまり、最終的結論はでていない状況である。 一方で、英語の名詞志向、日本語の動詞志向に関して、日本語では対応する構文は動詞表現になると考えられるrecursive+NP, repeated +NP, increased+NPなどの繰り返しを表す英語の名詞句表現といった具体的な構文事例を研究対象に特定し、例を採集し始めることができた。 研究が遅れている理由としては、交付決定後の予算配分の時期がずれ込み、さらに新型コロナ感染拡大のため各種学会、研究会の開催が中止もしくは限定された形でのオンライン開催になったため、必要とする情報収集活動が十分できなかったこと、さらに学内のコロナ感染拡大防止対応に追われたことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は英語の他動詞構文(a. My guitar broke a string. b. The stove has blown a fuse. (Taylor 2003:239))について実際の使用例なども観察しながら英語に好まれるnatural pathを基盤にした他動詞志向的である可能性について分析を行う予定である。また、同構文が英語の他動詞志向的natural pathに基づく構文だとして、構文ネットワーク上のプロトタイプに近い位置ではなく、ネットワークのより高次のスキーマにより認可され、使用頻度の比較的低い構文であり生産性が低いものであるかどうかを検証する予定である。また、その場合にnatural pathの観点から構文の特性を分析する予定である。 また、日本語では対応する構文は動詞表現になると考えられるrecursive+NP, repeated +NP, increased+NPなどの繰り返しを表す英語の名詞句表現のデータを本格的に収集し、日英語に好まれる2つのnatural pathの観点から考察を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナ感染症拡大により学会、研究会への対面参加が全くできなかったことによる旅費の不支出や感染症拡大防止対応に追われたために情報収集活動が十分できず図書等の購入が限定的であったことなどがあげられる。 次年度は引き続き感染症拡大防止対応により学会、研究会への対面参加が難しい状況が想定されるが、認知言語学や構文研究、談話機能言語学、日英語比較研究に関する情報収集のための図書購入やデータ収集のためのコーパス利用料支払いを予定している。また、感染状況を考慮しながら学会、研究会への参加をし、対面の場合は旅費の執行が予想される。
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