研究課題/領域番号 |
20K00669
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
菅野 悟 東京理科大学, 理学部第二部教養, 准教授 (80583476)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 英語学 / 統語論 / 生成文法 / vP構造 / ラベル付け / φ素性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ECM構文、結果構文、小節、また、二重目的語構文におけるvP内の構造をラベル付け(labeling)の観点から解明することである。この目的を達成するため、本研究は、(i) φ素性を構成する人称素性(person-feature)と数素性(number-feature)のそれぞれがラベル決定に参加することができ、また、(ii)統語派生は長距離の素性継承(feature inheritance)を許すという2点を仮定する。この仮定をすることにより、<person, person>や<number, number>のラベル付けが可能となる。 このようなラベル付けの可能性を追求し、(i)名詞句内部からの抜き出し、(ii)格付与、(iii)話者間の違いに対し、より深い説明を提示することを目的としている。 2020年度は研究の1年目にあたり、幅広い言語事実を観察することを主な目的とした。この研究成果は、Some Concepts and Consequences of MERGEというワークショップ(英語学会春季大会第13回大会)で発表された。また、この発表内容はJELS 38に提出されている。 ここで扱われた構文は寄生空所構文(parasitic gap construction)である。この構文は、vPの周辺で空演算子の認可がされていると考えられており、この構文を研究することによりvP構造の解明が期待できるためである。従来まで、寄生空所構文は、他の構文との差異性が強調されてきたが、このワークショップにおける発表では、ドイツ語の部分的wh移動構文(partial wh-movement construction)との類似性に注目し、両構文に同じ認可条件が関与していることが論じられた。 この研究は、他の構文のvP構造を解明するための、有益な理論的土台となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は研究の初年度にあたり、広範囲な言語現象を理論にとらわれることなく、収集することを研究の中心としている。基本的なデータに関してはおおむね収集することができた。また、それを説明する理論的な枠組みに関する考察も進んでいる。 このため、案として提示されたロードマップに沿って研究を進めることができおおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、次の2点に焦点を当て研究を進めることを計画している。まず、理論的枠組みの形成である。生成文法のラベル関する議論は進展が早く、また、かなり抽象度が進んでいる。このため、どのようなラベル付けの枠組みを考えるべきかを注意深く検討する必要がある。研究2年目に間にそのような検討を行うことを計画している。次に、学会の発表や論文の作成を進めることを目標とする。形成された理論がどの程度妥当であるのかは、他の研究者との意見交換により検証する必要がある。このため、積極的に学会での発表や論文の投稿を行うことにより、様々な意見を収集し、より広範囲な言語事実を説明できる理論の形成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会や研究会がオンラインとなり、旅費として計上されていた予算から、次年度へ繰り越す分が生じたため。
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