当該研究は英語の行為指示文の談話構造がテーマだが、最終年度では、(i)英語の間接行為指示文15タイプ各々が談話の中でどの行為指示文と共起しやすいのか、(ii)個々の間接行為指示文が談話文脈における位置と機能の分析を続け、英語の間接行為指示文の談話構造を認知言語学的・社会語用論的に特徴づけることを試みた。その結果、(i)ある種の間接行為指示文は談話内の位置・機能が固定しているが(例えば談話の導入部か中心部か結論部かなど)、間接行為指示文の多くは談話内の位置・機能が動詞を中心とする語彙の種類あるいは命題内容により大きく変異し、(ii)依頼は主に話者に利益をもたらすため行為であり、提案・助言は主に聞き手に利益をもたらすための言語行為とされるが、この社会語用論的違いが特定の動詞(とくにgiveやtell)の項の人称の頻度に如実に表れる、という知見が得られた。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は以下の5点に要約される。(i)間接行為指示文と共起する頻度がもっとも高い行為指示文は命令文であること、(ii)間接行為指示文が他の間接行為指示文と共起する事例は少なく、とりわけ系列が異なる間接行為指示文同士(will系とcan系やcan系とwhy系など)の共起例は稀であること、(iii)平叙文型の間接行為指示文は疑問文型より命令文の共起率が高いこと、(iv)異なる行為指示文には抽象度の違いがあり、命令文>間接行為指示 構文>イデイオム、の順に段階的に抽象度が下がり意味の具体性が高くなること、(v)命令文自体は(語彙と独立 に)特定の行為指示(例えば依頼、指示、助言など)を示さないが、間接行為指示文は構文自体が特定の行為指示を示す、という調査・分析結果を得た。
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