研究課題/領域番号 |
20K00678
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小町 将之 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70467364)
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研究分担者 |
大瀧 綾乃 静岡大学, 情報学部, 講師 (60840676)
田村 敏広 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90547001)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミニマリストプログラム / 項省略 |
研究実績の概要 |
統語論、語用論、言語獲得研究の各分野における省略現象に関する先行研究を収集して精査し、これまでの知見の整理を進めた。そのうえで、説明の道具立てとなる基礎的な仮説群の整理を行うと同時に、日本語の具体的な省略現象について、その分析の可能性を検討し、理論的課題の整理を行った。たとえば、英語と日本語に見られる省略上の対比として、主語や目的語の名詞句の省略可能性の相違が挙げられる。これらの名詞句は、英語では省略されないのに対して、日本語では省略される。このことについて、英語では、主語や目的語の名詞句と、それが項として関連する機能範疇との間に一致の関係が成立することが、項の省略をさまたげる要因となっていることが指摘されており、日本語でこれらの省略が認められるということは、このような一致がないことを示唆している。この分析上の見通しをめぐっては、1980年代以降、主語と機能範疇との間に一致がないことは筋の通った議論が多く提示されているものの、目的語と機能範疇との間に一致がないことについてはまだ十分に議論されつくしていないため、日本語において項と機能範疇との一致が完全に欠如しているかについては、慎重な検討が必要であることが明らかとなった。また、これらの対比が確立されたとして、一致のメカニズムのどの部分にどのようなパラメータを組み込むことによって、言語間の相違と母語獲得が説明されるのかについても、具体的な検討が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスに関わる様々な混乱により、日常生活と日常業務のレベルで大きな負担が生じたことと、今後の見通しが大きく崩れたことにより、当初計画から大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者と研究分担者の間のコミュニケーションおよび調査対象者とのやりとり(行動実験などを含む)に関して、新型コロナウィルスの感染対策に十分配慮した形で慎重に進めるとともに、当面は実験研究に着手せず、統語論、語用論、言語獲得研究の各分野における先行研究の検討と理論的体系の整理を継続する。また、対面式の実験が可能になったときに備えて、実験の構想を練り、計画策定を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスに関わる様々な混乱により、予定していた出張等ができなくなるなど、当初の計画通りの執行が不可能となったため、現実的に研究遂行の助けになるものから順次執行していった。新型コロナウィルスによる混乱は令和3年度以降も引きずることが予想されるため、社会情勢や研究機関の運営方針を踏まえながら、今後も研究の遂行に効果的な運用を心がける。特に、関連分野の先行研究を調査するための図書を継続的に購入するほか、状況が改善した場合には研究発表のための旅費として使用する予定である。
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