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2021 年度 実施状況報告書

総称文研究における認知能力に基づいた枠組みの検証

研究課題

研究課題/領域番号 20K00681
研究機関山口大学

研究代表者

岩部 浩三  山口大学, 人文学部, 教授 (90176561)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード総称文 / ヘブル語 / 代名詞的コピュラ
研究実績の概要

総称文には多様性がある。英語においては,無冠詞複数形を基本として,他に不定単数形,定単数形の総称文が存在する。岩部(2016)は,子供の認知能力に対応する無標の総称文が無冠詞複数形であり,大人の認知能力に対応する有標総称文に不定単数形や定単数形が対応することを指摘した。若干の違いはあるが,フランス語やドイツ語など冠詞を持つ言語には英語と並行的な多様性が存在する。その一方で,冠詞を持たない言語における総称文の多様性はどうなるのであろうか。
日本語においては,「犬(というもの)は4本足である」「植物は青い(ものだ)」という例から,「というもの」「ものだ」という表現が有標総称文であると考えられる。そして,ヘブル語の代名詞的コピュラ(PRON)の分布が日本語の「というもの」「ものだ」の分布と酷似していることが判明した。
ヘブル語総称文について,Greenberg(2002)の主張は「+PRON文は総称文である」「-PRON文は総称文ではない」というシンプルなもので,さらに「ヘブル語には総称を表す明示的な形式がある」という主張につなげている。すなわち,ヘブル語総称文には多様性が存在しないと言っているのである。詳細に吟味した結果,ヘブル語総称文には多様性が認められ,私の総称文分析の枠組に収まるという見通しを得た。そもそも,総称文がコピュラ文(英語のbe動詞文)だけに限定されるという帰結には無理があるが,Greenbergが用いた例の範囲内で論じるだけでも多様性は指摘できる。エピソード的総称文(「ネズミは1876年にオーストラリアに到達した」等)は,-PRONであるにも関わらず総称文である。同定文は総称文ではないとGreenbergは主張するが,同定文による総称文は存在する。
以上のような所見に基づいた成果を論文(岩部(2021)として発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の段階に応じて必要な書籍や論文を入手することができており,順調に成果も出ている。新型コロナウイルスにより,研究会や学会の運営がかなり制限されてきたが,オンライン開催も広がり,今後も大きな障害にはならないと思われる。

今後の研究の推進方策

冠詞を持たない言語の総称文の多様性について研究を進めたい。ヘブル語に定冠詞は存在するが不定冠詞は存在せず,文法的な意味での冠詞体系はないと言って良い。当面は,Greenbergの用例に基づいてヘブル語における同定文の研究を進める。冠詞を持たない言語としてはロシア語やウクライナ語等に深く関心を持っているが,単に母語話者であるというだけでなく言語学的な知識や直感を有する人でなければ,有用なデータが得られない。このようなインフォーマントを探すとともに,無冠詞言語を始めとして諸言語における総称文研究の文献が発表されることに期待している。

次年度使用額が生じた理由

学会がオンライン開催となるなど,旅費の執行はまったくできていない。その分資料収集が前倒しで進んでいるが,一部次年度使用が生じた。次年度の物品費と合わせて図書購入にあてる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 総称文の多様性--ヘブル語と日本語データによる検証--2021

    • 著者名/発表者名
      岩部浩三
    • 雑誌名

      英語と英米文学

      巻: 56 ページ: 29-56

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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