研究課題/領域番号 |
20K00682
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
中村 不二夫 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (20149496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 英語史 / 近代英語 / 統語変化 / 形態変化 / 助動詞 / 進行形 / 否定辞縮約 / 数詞 |
研究実績の概要 |
同じ一つの言語でありながら英米で異なる理由を移民の歴史の観点から説明することが主眼である。愛知から大阪の大学への転入と新型コロナへの対応に時間と労力を奪われ、ブカレストやウィーンでの国際会議発表や広島での招待講演も取り止めざるを得なかった昨年とは異なり、今年度は、これまでの国際会議口頭発表を次々に論文の形にまとめた。 具体的には、第48回ポズナニ言語学会(於ポーランド)における発表内容を、基数詞と序数詞に分け、2編の論文として公刊した。アメリカ英語の数詞の表現様式の変化をイギリス英語の表現様式の推移で説明した。また、第6回後期近代英語に関する国際会議(於スウェーデン)における口頭発表も論文の形に完成させた。2022年10月提出期限の近代英語協会研究叢書創刊号に投稿することにしている。2010年以降に口頭発表した国際会議12回分の配布資料は、手を加えることなく科学技術振興機構(JST)researchmapのpresentationの項で一般公開しているが、この発表はアクセス数が2番目に多い発表である。世界のさらなる反応が楽しみである。 第5回後期近代英語に関する国際会議(於イタリア)で口頭発表した、he don' t [= doesn' t] knowのような三人称単数現在の助動詞doの使用が遅くまでアメリカで使われた理由についての論考も完成させたが、60ページを超える量になってしまったため、2022年中に出版する英文単著の第3章に入れた。第40回近代・中世英語の国際コンピューターアーカイブ会議(スイス)で扱った、「prevent+目的語+(from)+動詞-ing形」構文のfrom使用・不使用の英米における違いについての論考は、論文としてはあまりに長大であるため、公表先を検討してはいるが、モノグラフとして出版する公算が強い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、所属と居住地が変わり、また新型コロナへの対応に時間と労力を奪われたが、今年度夏頃からは、国際会議口頭発表のための海外渡航を除き、通常に戻ったと感じている。授業を8コマ担当し、各種委員会委員を3つ務め、学会会長の職責を果たす傍ら、エフォート30%を科学研究費助成事業に傾注し、効率よく作業したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」の第三段落に記したように、2022年10月末を目途に英文単著を刊行する。そのあと直ちに、「prevent+目的語+(from)+動詞-ing形」構文のfrom使用・不使用の英米における違いについて、モノグラフの刊行準備に入りたい。さらに、前研究課題で果たし得なかった成果を達成するため、国際会議口頭発表の中から助動詞doの発達に関係する5つの研究を寄せ集め著書として準備を進めていたが、これを完成させたい。 国内の口頭発表としては、2022年8月に広島英語研究会の招待講演で、2023年5月に日本英文学会全国大会招待発表で、本事業の成果を披露することが決定している。国内学会での発表から暫く遠ざかっていたので、国内にも科学研究費による成果を還元したい。 新型コロナに対する恐怖心が払拭されてはいないが、当初の計画どおりアメリカ合衆国へ出かけ、母語話者たちの眼前で、同じ一つの言語でありながらなぜアメリカ英語がイギリス英語と異なってしまったのかを、発音、綴り、語法の証拠を示しながら講じたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に続き、欧米及び日本国における新型コロナウイルス感染症の蔓延により、国際会議口頭発表のための渡航費が執行できなかったこと、連動して、その読み上げ原稿と配布資料の母語話者による校閲料が不要になったことが大きな原因であるが、過去連続5期16年にわたる収支報告と同様、国際学会渡航旅費として申請が受理された予算は、あくまでそのような費目で執行したい。ウェブによる国際会議発表は、膨大な史料調査の結果をいくつもの統計表やグラフで提示する私にとって、未だに円滑な操作技術が伴わないため(特に、ZOOMの「画面の共有」という機能の活かし方)、対面での発表により欧米の専門家たちに成果を伝え、硯学たちからも学び吸収したい。 また、予定外の執行残が貯まったため、過去の国際会議口頭発表原稿・配布資料や和文論文も、著書または論文として順次公刊用の英文に仕上げるために、母語話者による英文校閲料として使用する。
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備考 |
2022年1月14日 愛知学院大学文学部特別講演「現代英語の謎を歴史で紐解く―音韻・形態・意味・文法の変化」
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