研究課題/領域番号 |
20K00682
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
中村 不二夫 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (20149496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 英語史 / 近代英語 / 統語変化 / 形態変化 / 助動詞 / 進行形 / 否定辞縮約 |
研究実績の概要 |
基金受給3年目も、新型コロナの流行を逆手に取り、国内での学術活動に重きを置き、これまでの国際会議口頭発表を論文にまとめる絶好のチャンスととらえ、効率よく作業した。また、その一方で、新型コロナ収束を見越し国外に学術活動の場を広げる行動をとり始めた。後者こそ私の科学研究費申請の本来の目的であり、年末に応募していた国際会議の発表許可が、3月に入って次々に届いた。真の意味で「実績」にできるのは次年度ではあるが。 具体的には、(1) 第6回後期近代英語に関する国際会議(2017年8月、於ウプサラ大学)における口頭発表を論文“The Ascent and Demise of the Participial Progressive in the History of English”に仕上げ、Linguistic and Stylistic Approaches to Speech, Thought and Writing in English [MEA Studies in English Philology and Linguistics 1]に投稿した。掲載可の通知が届き、ドイツのPeter Lang社からの刊行を心待ちにしているが、今年度中の出版とはならなかった。(2) 長い歴史を有する広島英語研究会から、第62回夏季セミナー(2022年8月)の招待発表の依頼を受け、“Negative Contractions Caught in a Web of Mystery: Why doesn’t was Delayed in American English”と題する講演を行った。なぜアメリカ英語では助動詞縮約形doesn'tの確立が遅かったかについて、膨大なイギリス英語の歴史史料の分析を併せ示しながら、謎解きをした。好評を博したと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度前半は新型コロナに負け気味であったが、後半は起死回生の逆転劇を演じた。授業を8コマ担当し、各種委員会委員を3つ務め、近代英語協会会長の職責を果たす傍ら、エフォート30%を科学研究費助成事業に傾注し、効率よく作業したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ収束を見込み渡欧を夢見てコツコツと作業していたが、見事開花した。1つ目は権威ある第22回国際英語史会議(2023年7月、於連合王国シェフィールド大学)、2つ目は第56回ヨーロッパ言語学会(2023年8月、於ギリシャ共和国アテネ大学)である。国内学会での発表から暫く遠ざかっていたので、国内にも本事業による成果を還元したいと考え、日本の英語英文学の最大規模の学会、日本英文学会第95回大会(2023年5月、於関東学院大学)で招待発表を、その1週間前には、第63回広島英語研究会で依頼発表を行う。新型コロナで抑圧されていた分、発散したい。今が正念場である。 これ以外にも、アメリカ合衆国へも出かけ、アメリカ英語話者たちの眼前で、発音、綴り、語法の証拠を示しながら、同じ一つの言語でありながらなぜアメリカ英語がイギリス英語と異なってしまったのかを講じるという夢を果たしたい。2010年以降に口頭発表した国際会議12回分の配布資料と読み上げ原稿は、科学技術振興機構(JST)researchmapのpresentationの項で一般公開しているが、世界のさらなる反応が楽しみである。
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次年度使用額が生じた理由 |
私の専門分野の国際会議は主として夏場に開催されるが、新型コロナが収束の気配を一向に見せなかったため、国際会議口頭発表のための渡航費が執行できなくなったこと、連動してその読み上げ原稿と配布資料の校閲料が不要になったことが大きな原因である。Linguist.Listという言語学研究者向けのサイトによれば、対面式の学会が復活してきているので、発表のための渡航費用と英文校閲料として使用したい。実際、2023年7月と8月にイギリスとギリシャで開催される国際会議口頭発表の審査に通ったので、4年ぶりに執行する。 また、直接的にも間接的にも本研究課題に関係する過去の国際会議口頭発表や和文論文も、順次公刊用の英文にしたいと考えている。その際の校閲料として執行したい。また、申請当初の計画どおりアメリカ合衆国へも出かけ、アメリカ英語話者たちの眼前で、同じ一つの言語でありながらなぜアメリカ英語がイギリス英語と異なってしまったのかを、発音、綴り、語法の証拠を示しながら講じる夢も果たしたい。過去連続5期16年にわたる収支報告と同様、国際学会渡航旅費として申請が受理された予算は、あくまでそのような費目で執行したい。血税を無駄に執行しなくてよかったと考えている。期間を1年延長してでも、無駄なく執行したい。あくまで対面での発表にこだわり、欧米の専門家たちに研究成果を伝えるとともに、硯学たちからも学び吸収したい。
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