研究課題/領域番号 |
20K00682
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
中村 不二夫 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (20149496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 英語史 / 近代英語 / 形態・統語変化 / 助動詞 / 否定辞縮約 / 英語の変種 |
研究実績の概要 |
同じ一つの言語でありながら英米で異なる理由を移民の歴史の観点から説明することが、複数年に亘る本研究課題の主眼である。厳しい審査に通りながらも新型コロナのため国際会議発表を取り止めざるを得なかった2020年度、2021年度、2022年度とは異なり、2023年度は、畳んでいた翼を広げ、国内外で躍動することに努めた。国外では、隔年開催の権威ある第22回国際英語史会議(7月、於連合王国シェフィールド大学)、毎年開催第56回ヨーロッパ言語学会(8月、於ギリシャ共和国アテネ大学)において口頭発表を行った。国内にも本事業による成果を還元したいと考え、日本の英語英文学の最大規模の学会、日本英文学会第95回全国大会(2023年5月、於関東学院大学)で招待発表を、その1週間前には、第63回広島英語研究会で依頼発表を行った。新型コロナで抑圧されていた分、発散した。いずれも、本研究課題の主眼に沿い、アメリカ英語の形態・統語の使用状況の謎をイギリス英語の表現様式の推移で解明した。好評を博したと思われる。2010年以降に口頭発表した国際会議12回分の配布資料と読み上げ原稿は、感謝の意を込めて、手を加えることなく科学技術振興機構(JST)researchmapのpresentationの項で一般公開しているが、昨年度の2つの国際会議発表は掲載の日が浅いせいかアクセス数が伸びていない。遠くない将来の世界の反応が楽しみである。研究は、もはや吸収の時代ではなく、発信の時代であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナも収束し、二つの権威ある国際会議の審査に通り口頭発表を行ったため。2千万例を優に超える証拠に支えられた発表だった。また、国内最大の日本英文学会全国大会において招待発表を、歴史ある広島英語研究会(ERA)において依頼発表を行ったため。本務校の授業を8コマ担当し、各種委員会委員を3つ務め、学会会長の職責を果たす傍ら、エフォート30%を科学研究費助成事業に傾注し、効率よく作業したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本科学研究費助成金受給課題「1つの言語、2つの語法―イギリス英語とアメリカ英語の相違の謎を移民の歴史で紐解く」に沿って、同じ一つの言語でありながらなぜアメリカ英語がイギリス英語と異なってしまったのかを、移民の歴史と照らし合わせながら、大規模な証拠で解明する。昨年末に応募していた二つの国際会議の組織委員会から、年度早々に発表許可通知が届いた。1つは6月に第45回近代・中世英語の国際コンピューターアーカイブ会議(45th ICAME、於Vigo大学)においてtoward(s), afterward(s)のように-ward(s)で終わる語が英米で異なる謎を解明する。いま1つは、9月にスペイン中世英語英文学会主催第34回国際会議(34th SELIM、於Granada大学)において、本来elder, eldestであった形容詞oldの比較級・最上級が、いつ頃どのようなプロセスで現状に至ったか、微妙に異なる英米の差異について謎解きを行う。新型コロナウイルス感染症の蔓延により国際会議口頭発表のための渡航費が執行できなかったため、4年前の申請書どおり費目どおりに執行できるよう本年度へ向け繰越金を温存しておいた。その基金で渡欧し発表する。国内でも、12月に開催される日本英文学会近畿支部大会で招待発表を行うよう依頼されており、延べ5年間に亘る本研究課題で、論文3、国際学会4、国内招待講演・発表4、志願発表1となる。 さらに、2010年以来ヨーロッパで行ってきた14の国際会議口頭発表すべての読み上げ原稿と配布資料をResearchmapにアップロードしているが、最もアクセス数の多い助動詞縮約形の発達に関する諸研究と、prevent構文のfrom使用・不使用の英米における違いについて、著書の刊行準備に入りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行のため国際会議発表のための渡欧が2回だけになってしまい、2回分の執行残が発生した。過去連続5期16年にわたる収支報告と同様、国際学会渡航旅費として申請が受理された予算は、あくまでそのような費目で執行すべきと了解しているので、費目を変えて機械物や書籍等に血税を使うことはしなかった。 その甲斐あって、昨年末に応募していた二つの国際会議から発表許可通知が届いた。年度末3月15日に補助事業期間延長が承認され、次年度に期間を1年延長して執行することが許可されており、当初の計画どおり、受給期間中に4回の国際会議口頭発表を行うことが可能となった。
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