研究課題/領域番号 |
20K00683
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
對馬 康博 藤女子大学, 文学部, 准教授 (50583093)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 参与者主語構文 / 属性構文 / 道具主語構文 / there構文 / 構文ネットワーク / 主述のフレームの協働 / 概念基盤 / 換喩 |
研究実績の概要 |
当該年度(令和2年度)は、(1)英語の「属性構文を含む道具主語構文」の拡張現象とそれに関わる概念基盤の解明を目指した。まず、属性構文についてである。この構文の主語は基本的にはモノである。概念化の背後にはモノを操作する(本来は際立ちをもつ)人間がいるが、その人間がモノに対して行う(動詞句で表される)行為が一般化されるため、特定の人間が捨象され際立ちを失い、モノへと際立ちが移行する。次に、道具主語構文についてである。この構文も同様に、人間から道具への際立ちの移行がある。概念化の背後には道具を操作する人間がいるはずであるが、敢えて道具へと際立ちを移行させている。したがって、(概念化において大きな違いもあるものの)これら2つの構文の共通点は、典型的な主語である人間から非典型的なモノ・道具へ換喩により際立ちを移行させるという点である。こうした際立ちの移行の背後にある概念基盤には、主述のフレーム知識(主語のフレームと動詞のフレーム)の協働が挙げられ、これにより構文がダイナミックに構築・拡張されていくことが明らかにされた。さらに、こうした概念基盤により、構文ネットワーク上、参与者主語構文から属性構文を含む道具主語構文までの連続性が捉えられることも解明された。 次に、(2)英語の(存在の)there構文に関わる主述のフレーム知識を明らかにし、それらの協働の観点から構文構築・拡張の概念基盤の解明を目指した。この構文は当初の計画では扱う予定がなかったが、thereは場所の副詞から文法化したものであることを考慮すると、広く言えばモノとの関連があるため取り上げることにした。there構文はその概念基盤として、thereのフレーム知識と動詞のフレーム知識の協働により構文が構築され、概念化されることが明らかになった。さらに、構文ネットワーク上、there構文と直示のthere構文の連続性も解明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究自体は順調に進んでいるが、COVID-19の影響により多くの学会・研究会が中止されたり、急遽オンラインにて開催されるなどの措置が取られる中、研究成果の公開(中間報告)に関しては、当初の予定よりもやや遅れている。まずは、研究遂行上で副次的に取り上げられた(2)のthere構文についての研究成果に関して、国内学会の雑誌(査読付き)に投稿し、令和3年3月に公刊された。さらに、(1)の研究成果については、国内外の学会・研究会及び論文投稿などを通じて公表が必要であるが、この点は今後公開を目指していく。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況でも述べたように、当該年度の研究自体は順調に進んでいるものの、研究成果の公開(中間報告)がやや遅れているため、今後、国内外の学会・研究会及び論文投稿などを通じて公表していく。 次年度は、研究計画通り、「セッティング主語構文とit非人称構文」の拡張現象とそれに関わる概念基盤の解明に取りかかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の研究成果(中間発表)の遅れに伴い、当該年度の経費を次年度使用額として繰越すこととなった。この繰越し金はやや遅れている研究の遂行のために使用する予定である。
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