研究課題/領域番号 |
20K00686
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
松藤 薫子 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (90334557)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 所有の概念 / 部分全体関係 / プロトタイプ / 中心的段階性 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで様々な研究から得られた知見を統合して、所有の言語理論構築を目指す。具体的には所有に関わる諸概念を概観し、所有の概念がどのように言語化されているのかを、言語理論、類型論、意味論、語用論の視点から検討する。所有の概念化と言語化がどのように発達するかを考察する。 2020年度は、「所有」という概念をどのように捉えたらよいのかについて概観し考察した。所有の概念の哲学的意義を理解し、所有に関わる諸概念を所有の言語化という視点から概観した。所有の概念の捉え方として、a) 独立した、原始的・決定的な特徴の集合とb) 経験に動機づけられた、より基本的な、同時に起こりやすい特徴の集合で、特徴間に家族的類似性を示す集合などがある。Taylor(1996:340)はb) を採用し、The possession gestaltを提案している。その提案の基となる現象や考え方を先行研究を参考に整理した。 2020年度の研究成果は、言語研究をする場合、所有の概念をどのように記述するのが妥当であるかを先行研究に基づき考察した。その結果、所有の概念の捉え方を4パターンに分類した。所有の概念は、部分全体関係で捉えるか、または中心的段階性で捉えるか、中心的段階性の場合、中心はいくつで構成され、いくつの段階があるのかにより特徴づけられることを示した。今後の課題は、所有の概念は、部分全体関係で捉えることが妥当なのか、典型とその変異で捉え、その変異がどのようなものかを理論的実証的に探究することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費の助成を受け、研究計画に基づき、研究はおおむね順調である。研究発表においては、投稿予定であった雑誌が、コロナ禍で突然に研究論文の募集停止をし、投稿できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、所有の概念がヒトに固有の言語においてどのように実現されているかについて考察し、言語理論、類型論、意味論、語用論の視点から検討し、その理論構築を行う。具体的には、言語獲得の最終産物である成人の言語の仕組みにおいて、所有がどのように言語化されているのかを明らかにするために、1)先行研究では、所有の言語化についてどのような記述や説明がなされているのか、2)世界の諸言語では、所有の言語化においてどのような普遍性と多様性がみられるのかを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)計画的に使用したが、計画値と実際値で誤差が1186円生じた。主な理由は洋書の価格変動である。
(使用計画)言語獲得関連図書、言語学関連図書、コーパス関連図書は、広範囲の言語の所有の概念・意味・表現に関する資料を収集する。また言語理論や言語獲得理論の理解を深める。所有に関する言語間変異・獲得に関する成果と課題の確認を行うために使用する。ノートPCは、データ分析や調査分析や実験計画のために使用する。調査用玩具は、実験的手法による調査計画に使用する人形やおもちゃなどである。スキャナー、スキャナー用紙、プリンター、コンピュータソフト、コピー用紙、複写費は研究・調査が円滑に進むように使用する。旅費は、日本英語学会、日本英文学会、日本言語学会などに参加し、情報交換や情報収集を行うために使用する。謝金は、資料整理の補助員への謝金は、文献リスト作成や、言語資料や発話資料の収集・整理の補助、調査資料の整理の補助労働の経費である。英文校閲費は、誌上発表するための経費である。
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