研究課題/領域番号 |
20K00686
|
研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
松藤 薫子 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (90334557)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 所有 / 言語化 / 普遍性 / 多様性 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで様々な研究から得られた知見を統合して、所有の言語理論構築を目指す。具体的には所有に関わる諸概念を概観し、所有の概念がどのように言語化されているのかを、言語理論、類型論、意味論、語用論の視点から検討する。所有の概念化と言語化がどのように発達するかを考察する。 2021年度は、2020年度に所有の概念を考察した知見に基づき、言語獲得の最終産物である成人の言語の仕組みにおいて、所有がどのように言語化されているのかを明らかにするために、先行研究では、所有の言語化についてどのような記述や説明がなされているのか、世界の諸言語では、所有の言語化においてどのような普遍性と多様性がみられるのかを考察した。 2021年度の研究成果は、日本語、英語、中国語に焦点をあて、所有の多様な意味において、どのような意味をどのような表現で表すのかを考察した。3か国語において、名詞句所有と叙述所有で10タイプを表すことができる。名詞句所有の形式に関しては、日本語はNP1のNP2、中国語は標識deがある名詞句とない名詞句、英語はNP1’s NP2, NP2 of NP1がある。叙述所有は3か国語とも所有動詞が使われる。名詞句所有と叙述所有以外に関して、中国語は、文で表す所有文(二重主語構文、他動詞文、自動詞文)、話題文でほぼ10タイプを表す。英語は外的所有文があり、使える動詞と表す意味に制限がある。日本語では、外的所有文はないが、所有受動構文は7タイプ、二重主語構文(感情形容詞文)は4タイプ、他動詞文は3タイプを表す。 日本語、英語、中国語の所有表現には形式と意味に多様性がみられるが、このような多様性は子どもの言語獲得の産物である。多様性がある一方、概念的に密接な結びつきがあり、名詞句所有や叙述所有ではない外的所有等で表されるやすい体とその部分の関係は普遍的であるように考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費の助成を受け、研究計画に基づき、研究はおおむね順調である。研究発表においては、投稿予定であった雑誌が、研究論文の募集停止をしており投稿できなかった。数年間成果を積み、学会発表に向けて準備をしている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2020年度と2021年度に所有の概念や所有の言語化を考察した知見に基づき、所有表現がどのように獲得されるのかを明らかにする。具体的には、類型論的に異なる言語(英語、日本語、中国語など)について、所有の言語化の発達過程に関する実証的資料を精査する(成人の言語アンケート調査資料、子どものCHILDESなどの発話資料、子どもの実験的手法による調査資料を分析考察する)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)計画的に使用したが、計画値と実際値で誤差が9868円生じた。主な理由は洋書の価格変動である。 (使用計画)言語獲得関連図書、言語学関連図書、英語学図書は、広範囲の言語の所有の概念・意味・表現に関する資料を収集する。また言語理論や言語獲得理論の理解を深める。所有に関する言語間変異・獲得に関する成果と課題の確認を行うために使用する。タブレットや録音機器は、調査のために使用する。調査用玩具は、実験的手法による調査計画に使用する人形やおもちゃなどである。スキャナー、スキャナー用紙、プリンタ、コンピュータソフト、コピー用紙、複写費は研究・調査が円滑に進むように使用する。旅費は、日本英語学会、日本英文学会、日本言語学会などに参加し、情報交換や情報収集を行うために使用する。謝金は、専門知識提供の謝金は実験的手法の調査計画に使用し、調査補助の謝金は、調査時の労働経費であり、資料整理の補助員への謝金は、文献リスト作成や、言語資料や発話資料の収集・整理の補助、調査資料の整理の補助労働の経費である。英文校閲費は、誌上発表するための経費である。
|