研究課題/領域番号 |
20K00689
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
入学 直哉 福井工業大学, 工学部, 教授 (50597937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 構文交替 / 所格交替 / clear型動詞 / 項構造構文 / 前置詞 / 英語史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はrobに代表される'NP1 V NP2 of NP3'構文のみを取るとされる奪取動詞がsteal型の'NP1 V NP3 from NP2'構文と所格交替を行うような例外的現象についてコーパスに基づいた実証的考察を通時的・共時的に行うものである。 本年度はまず予備的調査としてすでに収集していた現代英語におけるrobに関するコーパスデータの分析から着手した。'NP1 rob NP2 of NP3'構文の用例について、各項に生じるNPの意味タイプ別に各用例を基本構文(NP1(有生) rob NP2(有生) of NP3(具象物))と2つのタイプの派生構文(NP1(有生/無生) rob NP2(有生) of NP3(抽象物)/NP1(有生/無生) rob NP2(無生) of NP3(抽象物))に分類した。その結果、基本構文よりも派生構文の方が使用頻度が高いことが判明した。また'NP1 rob NP3 from NP2'構文はCOCAにおいて31例確認されたが、そのうちの27例は派生構文であることから、robの中核義の喪失が所格交替に関係していることを明らかにした。 さらにLevin(1993)においてcheat型に分類されている非交替動詞48語について、'NP1 V NP3 from NP2'構文と交替するかどうかをCOCA、BNCを用いて調査を行った。その結果、bilk、bleed、cleanse、depleteなど15語に関しては所格交替を行うと認められた。そのうち、bilk、bleed、milk、sap、swindleに関しては'NP1 V NP2 of NP3'構文と'NP1 V NP3 from NP2'構文の数は拮抗しており、ease、free、plunder、purifyは'NP1 V NP2 of NP3'構文よりもむしろ'NP1 V NP3 from NP2'構文の方が優勢であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cheat型動詞の所格交替現象に関してコーパスによる用例の収集と分析を行い、現代英語におけるこれらの動詞の使用の実態を明らかし、その調査結果を論文としてまとめることができた。したがって今年度計画していた調査研究を達成できたことから「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査で交替動詞としての使用が明らかになったものを取り上げ、CD-ROM版のOEDやEarly English Books Online (EEBO)、Corpus of Historical American English (COHA)などを用いて、前置詞との共起関係の発達を通時的に考察する。特に項の意味関係に焦点を当てて分析を行いof前置詞構文とfrom前置詞構文との本質的な相違を明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で参加予定であった学会が中止またはオンライン開催となったため「旅費」の支出がまったく発生しなかった。次年度使用額が生じた分は書籍等購入のために充てる予定である。
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