本研究はコロナ禍の影響により、1年延長したため本年度が最終年度となった。最終年度はLevin(1993)においてclear型動詞に分類され、所格交替を行うとされているclear、clean、drain、emptyのうち、emptyとdrainに関してOEDやEEBO、COHA等のコーパスから実例を収集し、各々の動詞が移動物目的語構文と場所目的語構文において近代英語期以降にどのような発達を遂げたのかについてその変遷の様相を明らかにした。またrobは現代英語においては非交替動詞とされるが、COCAを調査すると‘NP1 V NP3 from NP2’構造に生じる用例が一定数観察されることから、EEBOとCOHAを使用してこの構造に現れる近代英語期以降のrobの用例を収集し分析を行った。 本研究では除去動詞の所格交替に関して、現代英語における言語使用の実態と史的発達の過程を明らかにした。Levin(1993)において場所目的語構文のみを取るとされるcheat型に分類されている48語の非交替動詞が現代英語において移動物目的語構文に生じるかどうかをCOCA、BNCを用いて調査を行い、非交替動詞が交替する事象について検討した。また所格交替を行うclear型動詞であるclear、clean、drain、emptyに関して史的コーパスから実例を収集し、各々の動詞の近代英語期以降の移動物目的語構文と場所目的語構文の発達過程を解明した。clearを除くclean、drain、emptyは古英語から存在する語彙であり、これらの動詞に関しては古英語期の用法が両構文の発達に関わっていることを指摘した。中英語期にフランス語から借入されたclearについても古英語の除去・奪取動詞の2つのタイプの二重目的語構文が当該動詞の移動物目的語構文と場所目的語構文の誕生に影響していることを明らかにした。
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