研究課題/領域番号 |
20K00690
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
久米 祐介 名城大学, 法学部, 准教授 (40645173)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 疑似受動文 / 通時的発達 |
研究実績の概要 |
tough構文の研究に先立ち関連構文である疑似受動文の研究から行った。疑似受動文はtough構文と意味的統語的な共通点が観察される。まず、どちらの構文でも主節の主語と述語内の要素が少なくとも表層的には同一である。tough構文では不定詞節内の目的語が主節の主語と同一であり、疑似受動文では前置詞の目的語が主節の主語と同一である。次に、意味的にもどちらの構文でも主語の特性や属性を叙述する解釈が可能である。当該年度の研究では、疑似受動文の共時的特徴を記述し、歴史コーパスから得られたデータを分析をすることで通時的発達過程を明らかにした。具体的には、後期中英語の関係詞節内で観察される前置詞の目的語のwh移動や不変化詞を伴う複合動詞の発達などの影響により、動詞と前置詞が融合し前置詞の目的語を主語とする前置詞句動詞タイプの疑似受動文が派生した。初期近代英語になると疑似受動文の頻度や動詞と前置詞の組み合わせパターンが大幅に増加し、動詞と前置詞が融合しない付加詞の前置詞句の目的語が主語として現れる前置詞句タイプの疑似受動文が派生した。前置詞句タイプの疑似受動文では前置詞句からの抜き出しが不可能であるため、主語は前置詞句外に基底生成し何らかの操作によって前置詞の目的語と結び付けられているはずである。今後の研究では前置詞句タイプの疑似受動文の統語構造と派生を明らかにし、tough構文の派生とどのような関係があるのか共時的通時的観点から研究を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
tough構文と統語的意味的に関連のある疑似受動文の発達について重要なデータを得ることができた。特に、初期近代英語の調査において前置詞句動詞タイプから前置詞句タイプの疑似受動文の発達を裏付けることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
前置詞句タイプの疑似受動文の統語構造を明らかにし、tough構文との共時的通時的関連性を見出していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りの使用であったため使用計画に問題はないと思われる。
|