研究課題/領域番号 |
20K00691
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
岩田 彩志 関西大学, 文学部, 教授 (50232682)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | way構文 / 項構造 / 構文文法 / 語彙・構文アプローチ / force dynamics |
研究実績の概要 |
BNCで頻度が高かった動詞のうち、find・pick・feelではforceにより障害物を取り除いているという分析が難しい。だがこれらのway構文も、やはり「外的困難にもかかわらず移動する」という特徴付けに合うと考えることができる。まずpick one’s wayの実例を調べてみると、As LeRoi picked his way through the debris and destruction of the demolished townのように、自分の足を置く場所を選びながら進む、という移動を表している。つまり、障害物を避けることで、進むことを可能にしている。次にfind one’s wayでは、Ari tried to find their way through the labyrinth of Roirbak’s complex to the canteenのように、自分の進むべき方向が分からず、道を探しながら進んでいる。「道が分からない」とは、外的困難の一種と考えることができるから、進むべき道を見つけることは、その困難を乗り越える行為になる。さらにfeel one’s wayでは、One night all the lights went off so we had to feel our way up to our roomsのように、暗くて先が見えない中を、手探りで進むことを表している。「前が見えない」とはやはり外的困難の一種であり、手探りをするのはその困難を乗り越えるための行為である。 つまりfind・pick・feelのway構文では、やはり困難を乗り越えて前進する、という意味ではfight・push・forceのway構文と全く同じである。そのため結局は「可能化」タイプと認めることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、3つのコーパスからway構文の実例を可能な限り多く収集して、それに基づいてforce dynamic分析を当てはめることを考えている。このうちBNCとWordbanksからは、一通りデータの収集が終わったが、Corpus of Contemporary American Englishはまだまだ時間が必要である。これは、このコーパスでは一度に検索できる量に制限があることと、予想以上にway構文の実例数が多いことが、主たる原因である。同時に、思いがけないデータが見つかる可能性が高いのもこのコーパスの特徴なので、しっかりと時間をかけて丁寧にデータを見ていかねばならない。 way構文の分析自体はそれなりに進んでいるが、このようにデータの収集・整理に予定よりも時間がかかっている。またコロナ禍のために、海外の学会で発表して海外の研究者と意見交換を行う機会が事実上ほぼなくなってしまったのも、マイナス要因となっており、全体としては予定よりも遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
BNCで高頻度に生じる動詞の中で、多く(fight・force・push・pay)はforce dynamic分析で扱えることが分かっている。さらにいくつか(find・pick・feel)は、そのままforce dynamic分析で扱うことはできないけれども、やはり「困難にもかかわらず進む」という特徴付けには合っている。次に注目したいのがwork one’s wayである。先行研究の分類法からすれば、workは他の動詞と同じくいわゆる「手段」タイプになる筈であるが、どうもこれまで分析してきた動詞とは異なるようである。work one’s wayをどのように分析の中に取り込んでいけるかを考察していく。 またCorpus of Contemporary American Englishからのデータ収集を可能な限り進めていきたい。そうすることで、これまでの分析結果を補強し、さらには新たな知見が得られることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はベルギーで開催予定の国際学会に出席して研究発表を行う予定であったが、コロナ禍により延期となり、結局は現地で開催されなかった。そのために出張旅費として計上した分が、そっくり残ってしまった。 現在はコロナ禍が落ち着いているようにも見えるが、まだまだ海外の学会に参加するのはためらわれる。主に関連図書の購入や、パソコン関連機器の充実、さらに論文の校閲などで予算を使用していく予定である。
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