これまでの本研究で、BNCにおいて頻度の高いfind・pick・feelのway構文は、いずれも「困難を乗り越えて前進する」と分析できることを明らかにしていた。ところがやはり頻度の高いwork one’s wayでは、どうもこの特徴付けが上手くいかない。 実際にforce dynamic分析を当てはめてみると、work one’s wayは「可能化」タイプとは異なることがはっきりした。「可能化」タイプでは、進行を妨げる障害物があり、それを何らかの手段で取り除き、進行を「可能化」していたわけだが、I was working my way up the ladder のような文では、そのような障害物が見当たらない。寧ろ上方向へ移動する際には、重力のせいで移動が困難になる。だから強いて言えば、重力もしくは移動者自体の重量が障害物に当たるが、それを取り除くわけにはいかない。代わりに、自らの身体にforceを行使することにより、重力に逆らっての移動を可能にしている、と考えることが出来る。 この考え方に従えば、work one’s wayはforce dynamicsの観点から「可能化」タイプでなく「使役」タイプだということになる。そしての結果構文と同じforce dynamicsを持つことになるのだが、実際にほぼ同じ内容を結果構文でも表現することが出来る(You work yourself up the career ladder)。 以上の考察から、先行研究で「手段」タイプとされていたものには、「可能化」タイプと分析すべきものだけでなく、「使役」タイプと分析すべきものも含まれる、と結論づけられる。
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