研究課題/領域番号 |
20K00693
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
福元 広二 広島修道大学, 商学部, 教授 (60273877)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 英語史 / 評言節 / 文法化 / 中英語 / 初期近代英語 / 補文標識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、三人称人称代名詞Itを含む評言節を文法化・主観化の観点から通時的に考察することである。具体的には、三人称人称代名詞を含む評言節の中でも、Itを形式主語とし、動詞+that 節、や形容詞+that 節が後続する構文に焦点を当てて、中英語期から後期近代英語期におけるデータを収集し、どのような用例において、主語Itの脱落や補文標識thatの脱落が見られるかを考察することである。また統語的な観点からは、補文標識thatの脱落により、どのような用例が、文中や文末で見られるのかを調査するものである。 令和2年度においては、中英語期における三人称人称代名詞を含む評言節の用例を収集した。まず、中英語期で最も多くの作品があるChaucerについてコンコーダンスを利用して、三人称人称代名詞Itを含む用例を調査した。その結果、Chaucerにおいては、まだ補文標識thatが脱落しておらず、It+動詞+that 節の形式が多くみられた。例えば、seemに関しては、it semeth thatや as it semeth meのようにasを伴っている例も見られた。 また、初期近代英語期の劇作品についても調査を行った。その結果、初期近代英語期に入ると、例えば、it seemsは、that 節の補文標識thatなしで、使われる例が多く見られるようになる。また、文頭だけでなく、文中や文末にも置かれるようになり文法化していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に提出した研究計画書にしたがって、令和2年度においては、三人称人称代名詞Itを含む評言節の発達を調査するために、中英語と初期近代英語におけるItとthat 節が共起する用例を収集し、主語Itの脱落や補文標識thatの脱落が見られるかを考察することができた。そのため、現在までに進捗状況としては、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、交付申請書の通りに、英語史における三人称人称代名詞Itを含む評言節を文法化・主観化の観点から考察していくつもりである。研究計画の変更や研究を遂行する上での課題等は特にない。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)旅費については、令和2年度は、コロナウィルスの蔓延により、学会が中止されたり、オンライン開催になり、出張ができなかったからである。
(使用計画)令和3年度も学会がオンライン開催となれば、その分を物品費に充てるつもりである
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