研究実績の概要 |
本研究では、三人称代名詞Itを含む評言節を文法化・主観化の観点から通時的に考察している。具体的には、三人称代名詞を含む評言節の中でも、Itを形式主語とし、動詞+that 節、や形容詞+that 節が後続する構文に焦点を当てて、中英語期から後期近代英語期におけるデータを収集し、主語Itの脱落や補文標識thatの脱落の結果、文法化がいつごろからみられるかを考察している。 令和3年度においては、1500年から1700 年までの初期近代英語期における三人称代名詞を含む評言節の用例を収集した。文学作品やコーパスなどの資料から、It may be that, It may hap, It may happen などの用例から16世紀においてItが脱落して次第に、may be, may hap, may happen のような用例が見られた。統語的な観点からは、文頭だけでなく文中や文末における挿入的な用法も見られるようになった。また、副詞belikeと同じような意味を表すIt is likely も文頭だけでなく文中や文末に置かれて、話者の推量を表す用例が見られた。さらに、動詞seemに関しては、文中のit seems だけでなく、as it seems で文末にも見られた。ジャンルにおいては、やはり口語性の高いとされる劇作品に多く見られたという特徴も指摘できた。このような用例においては補文標識thatがかなり早い時期から脱落していることも明らかになった。
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