研究課題/領域番号 |
20K00699
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
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研究分担者 |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 教授 (30271084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カタカナ語 / 外来語 / 語彙 / 意図的学習 / 教材開発 / 日本語教育 / 言語習得 |
研究実績の概要 |
従来,周辺的な存在とされてきたカタカナ語の一部は基本語彙として定着し,類義の和語や漢語と共存するようになったが,両者の使い分けは日本語学習者にとって難しい。本研究ではカタカナ語の効果的な語彙指導を検討するため,文脈によってカタカナ語と類義語を学習者がどのように使い分けているのかを明らかにすることめざしている。今年度は,これまでデータの収集をおこなってきた調査の結果をまとめた。まず,中上級レベルの日本語学習者と日本語母語話者を対象としてカタカナ語とその類義語が使われる文脈を設定し,ふさわしいと思う語を選ぶ質問紙調査のデータの分析をおこなった。その結果,多義的なカタカナ語をさまざまな文脈で使うことが難しいなど,学習者は文脈によって使い分けの難しさが異なることが明らかになった。 また,コーパスを利用して日本語学習者がカタカナ語と類義の和語や漢語をどのように使用しているのかを調査した。昨年度,実施した日本語母語話者のコーパスを用いた調査では,カタカナ語とその類義語の使い分けの基準が認められ母語話者の使用状況の一端が明らかになった。本年度はそこで課題として残された学習者の使用を明らかにするため,国立国語研究所の「I-JAS」多言語母語の日本語学習者横断コーパスでの使用状況を分析した。学習者がカタカナ語を使う文脈,意味やカタカナ語と共起する語(コロケーション)を分析し母語話者との比較をおこなって,日本語学習者がカタカナ語のサ変動詞をどのように使っているのかを探った。その結果,おおむね母語話者と同様の使用が確認された語もある一方で,共起語の選択と類義語との使い分けが学習者にとって課題であることがわかった。 研究成果の一部は,日本語教育学会春季大会(2021年5月)等において発表し『日本語教育連絡会議論文集』34に論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大の影響が引き続いているため当初の計画の一部変更が必要になった。特に,渡航制限の影響により外国人留学生が減少したことによって,日本語学習者を対象とした調査は十分におこなうことができない状況であった。そこで,まずは,これまでデータを収集してきていた質問紙調査等の結果を分析してまとめ,学会で口頭発表をおこなった。また,昨年度より研究計画を再検討して,コーパスを用いた日本語学習者と日本語母語話者のカタカナ語と類義の和語・漢語の使用を探る調査を前倒ししておこなっている。今年度は日本語学習者のコーパスを利用して,日本語に定着しつつあるカタカナ語サ変動詞について学習者の使用の実態を分析し母語話者の使用との比較をおこなうことができた。さらに,学習者を対象とした新たな使い分けに関する調査の予備調査をおこない,今後,調査対象者や調査方法を工夫しながら可能な範囲ですすめていく予定である。以上の点から,計画の一部変更はあるものの現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画で予定していた日本語学習者を対象とした調査は,新型コロナウイルスの感染拡大の継続で十分には進められなかった。そのため,これまでデータを収集してきていたカタカナ語とその類義語の使い分けに関する調査について分析し山下・畑・轟木(2021)で学会発表をおこなったが,今後はそこで得られた意見・助言等も検討して論文としてまとめる予定である。そして,この調査結果もふまえて学習者を対象とした新たな調査に着手し質問紙の作成を検討している。このカタカナ語の使用に関する調査に取り組み,得られた成果を学会や研究会等で発表してきたい。 また,コーパスを用いた学習者のカタカナ語の使用状況を探る調査については藤原・山下(2021)等で論文にまとめることができたが,さらに分析を進めて効果的な学習のため学ぶべき優先度の高いカタカナ語の意味,用法や類義語との使い分けを精選する。今後も予定通り計画を進められない可能性も考えられるが,研究計画を調整し工夫して対応し研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響が続き国内と海外で参加を予定していた学会や研究会がすべてオンライン開催になり,また,研究打ち合わせもオンラインでおこなったため,当初,計上していた交通費や会場費等が未使用となり次年度使用額が生じた。 次年度以降は次第に対面での開催も可能となると思われるので,学会や研究会に参加して研究成果の発表をおこなう交通費等として使用する予定である。また,代表者,分担者と調査協力者の連携をより強化し研究を進めるため,研究打ち合わせも予定している。さらに,現在,予備調査に着手している日本語学習者を対象とした調査に取り組みデータの収集をおこなう計画であり,そのデータの分析や資料整理のための謝金等としても使用したい。
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