研究課題/領域番号 |
20K00705
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
保坂 敏子 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 教授 (00409137)
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研究分担者 |
島田 めぐみ 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 教授 (50302906)
谷部 弘子 東京学芸大学, 学内共同利用施設等, 名誉教授 (30227045)
増田 朋子 神奈川大学, 経営学部, 非常勤講師 (70869411)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 外国語教師 / 資質・能力 / 認定試験 / 要請・研修 / 資格 / 比較研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本、イギリス、フランス、ロシア、中国で現在実施されている自国語を第二言語・外国語として教える教師の認定試験と養成・研修課程の教育内容について調査を行い、比較分析することを通して、「グローバル化社会における第二言語・外国語教師にはどのような資質・能力が求められるか」、「今後の養成・研修においてどのような教育内容が求められるか」を探ることである。 本研究の2年目である令和3年度(2021年度)の行動目標は、各国の第二言語・外国語として自国語を教える教師の認定試験の資料収集と比較分析、並びに、教師養成・研修課程に関する各国の現状調査である。目標達成に向けて、代表者、研究分担者、研究協力者は各担当分野の調査を行い、その結果について6回の研究会を開催して情報共有と検討を行った。具体的な内容は以下のとおりである。なお、当初予定していた現地調査はコロナ禍による移動制限のため実施できず、インタビュー調査等に変更した。 (1)日本については、文化庁が進めている資格制度等について継続的に調査を行い、その結果を論文にまとめた。(2)イギリスについては、調査対象となる英語教師養成を実施している大学や機関を検討し、予備的なインタビュー調査を1件実施した。また、ケンブリッジ大学が実施する認定テストを入手し、比較分析を始めるとともに、参与観察として認定テストを受験した。(3)フランスについては、調査対象となる仏語教師養成を実施している大学や機関を検討し、インタビュー調査を1件実施した。(4)ロシアについては、ロシア語教師教育をまとめた書籍を入手し、分析中である。(5)中国については、養成・研修課程の内容について調査した。また、認定試験の模擬試験の比較分析を開始した。 このほか、昨年度収集したヨーロッパ言語教師教育の枠組み(EPG)と文化庁が公開している日本の枠組みを比較し、学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の2年目となった令和3年度(2021年度)は、認定試験の調査と比較分析については、当初の予定通り進めることができた。具体的には、入手できた日本と中国、イギリスについて、比較分析に着手した。イギリスの認定試験については、参与観察として、イギリス担当者が実際にテストを受験し、試験の実施状況調査を行うとともに、日本の認定試験との違いを検討した。この点で認定試験の調査については当初の予定より発展している。なお、フランス、ロシアについては昨年度の調査結果から一般的な認定試験が実施されていないことが分かったため、分析の対象とはしていない。 一方、言語教師の養成・研修課程の調査については、コロナ禍による移動制限により、当初予定していた海外における現地調査が実施できなかった。このため、オンラインを利用するインタビュー調査等への切り替えを検討し、調査対象機関を絞り込み、調査依頼を行ったが、調査協力を得るのに苦戦を強いられており、予定より遅れている。具体的には、令和3年度末時点でインタビュー調査が実施できたのは、本調査がフランス1件、予備調査がイギリス1件のみだった。令和4年度も継続してインタビュー調査を行う予定である。中国については、現地の調査協力者が見つかり、順調に調査が進んでいる。ロシアは、現地専門家との接触や現地の情報入手が難しいことが分かり、現地からロシア語教師教育の専門書を入手し、現在分析中である。令和4年度も引き続き現地専門家との接触を試みる予定である。日本については、文化庁の資料や各種学会等で発表された各機関の現状報告の資料が収集でき、令和4年度に聞き取り調査を行う予定である。以上、移動制限等により、当初の予定通り進められず、研究は遅れ気味ではあるが、代替の調査により、同等の質の情報は得られている。次年度も引き続き状況に合わせて、臨機応変に対応する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の令和4年度(2022年度)は、以下の2つに取り組む予定である。 (1)1~2年目で実施した各国の自国語を第二言語・外国語として教える教師の認定試験や認定制度の調査と比較分析の結果を基に、そこで求められる教師の資格・能力や、それが求められる背景について本プロジェクトの研究会で多角的に検討する。同時に、それぞれの試験や制度のなかで特徴的なものを取り上げ、深堀りをする。これらをまとめて、研究成果として、学会等で発表する。 (2)日本、イギリス、フランス、ロシア、中国の5か国における第二言語・外国語として自国語を教える教師のための養成・研修課程について、現地の状況を明らかにするために、それぞれ可能な調査を継続して実施し、その研究成果をまとめて学会等で発表する。当初予定していた現地を訪問して行う聞き取り調査は,令和3年度と同じように実施が困難なものと思われるので、それぞれ担当する国の状況に応じて、臨機応変に調査を実施する。現時点では、イギリスとフランスは、オンラインによるインタビュー調査を実施予定である。中国は、現地協力者と協力しながら、調査を進める。ロシアは、調査協力者、調査協力機関との接触を図る予定であるが、現在の国際状況から考えると、文献調査で同等の価値の結果を目指す可能性がある。日本については、収集した資料をまとめたうえで、必要な聞き取り調査を行う。さらに、先行研究を基に、新しい教師教育の方法について検討を行う。各国の調査は、移動が可能になった場合は,現地調査を実施する場合も想定している。収集した各国のデータについては、本プロジェクトの研究会で多角的に検討を行い、各国の養成・研修課程の特徴やそれぞれを比較分析して見えてくるものについて明らかにしていく。これを、本プロジェクトの研究成果として個別に学会等で研究発表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、本研究のために当初予定していた現地調査(イギリス,フランス,ロシア,中国)がコロナ禍による移動制限のために渡航ができなかったため、また、同じ理由で海外の学会が中止になったり、オンライン開催となったためである。また、対面で実施予定だった本プロジェクトの研究会も全てオンライン開催にしたことも理由に挙げられる。 令和4年度に移動が可能になった場合は、現地調査を実施することも考えられ、繰越金はこれに充当する。もし、コロナ禍で移動が引き続き困難な場合は、現地の研究協力者と連携してインタビュー調査者を増やして録音資料の文字化を行ったり、さらなる資料収集を行って、その翻訳費用に充てる予定である。
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